思いがけない同行者の存在により問題が生じていた。
最初は邪魔になったら置いていくなり売っちまうなり考えていたのだが、後ろをぴったりと付きまとい、ほぼ無言でこちらを見てくる。
監視されている様な気分で落ち着かない上、感情が分からない。

監獄されたために、旅する雑貨品や食料がないのでそれも買いたいのだが資金もない。
何より痛いのは…腕に着けていた装着型の記録装置だ。
周囲の地図や情報、つけている自分の体調などが表示され、記録もできるから便利だったのだが…。
監獄された時に奪われてしまってそれっきりだ…。

「あーくそっ、ついてねぇ」

とりあえず食えそうな野草や虫を火で焼いて食べる。
食えそうな物は一通り分かるのが救いだ。
水辺の近くで野営をしているので水にも困らない。

だが…調理器具も欲しい…というか食材が欲しい…。

しかし、どれに対しても金がかかり、少女の事も考えると出費は激しいだろう。
相変わらず後ろに居座る少女を見ると俺の手にある姿焼き虫を見ている。

「食べてみるか」

試しに差し出して見る。
少女に虫を食わせるとか他の人に見られたら何と思われるだろうか？
名誉のために言うならば見た目は酷くても味はとてもいいのだ。
ポリポリと少女が食べている。
すんなり食べるとは思っていなかった。
気のせいじゃなければ少し表情が明るく見える。

…キノセイ…ダロウ

眠くなってきたのでさっさと横になる。
寒くないので野宿でも大丈夫だが、これもやはり最低限毛布ぐらいは手に入れておきたい。

金…金がな…。

眠気に誘われ意識が落ちていく…。
目を開けると暗い場所に座っている。

夢か…

夢かも分からないのにそう思ってしまう。
座っている自分の前に小さい小人のようなユラユラ揺れるモノが現れる。
小さい女の子の様な姿に見えるが人ではない。
陽炎のように揺らめいている。
少しずつ近づいてくる陽炎と共にフフ…ウフフという感じに小さな笑い声が聞こえる。
泣いている様にも聞こえる笑い声が目の前で止まり口を開く。

「ヒどイヨ、せっかク、アエたのに、オいてイクなんテ」

そう聞こえると左手首に噛み付かれた。
陽炎が集まって少しず…腕に…熱…いた…。
そこで飛び起きる。
朝になっていて少女が無表情に見つめている。

「悪夢で起きるとはな…」

汗が気持ち悪い…思わず左腕で汗を取る用に額を擦る。
冷たく硬い感触が気持ちいい…?
左腕を見ると奪われたはずの記録装置が腕についている。
外してみようとするが外れない。
ボタンを押すと慣れた画面と左下に揺らめく陽炎の姿が見える。

無機質の画面に文字が表示される。

ずット、イっしョ、ダよ

勘弁してくれ…。
不幸は何度も続くようだ。