むかしむかし、ある所に、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
ある日のこと、おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは街へ洗濯に行きました。
………なぜ街へ？

「鬼の居ぬ間に命の洗濯よ、げへへへ」

とか言って、下衆い笑いを振りまきながら、おじいさんには内緒の軍資金を持って街に繰り出します。
おばあさんが街で命の洗濯をしていると、ドンブラコ、ドンブラコと、大きな桃が凄い速さで流れてきました。
ちなみにおばあさんは既に３軒梯子した後だったので、目に映ったものが真実であるとは限りません。
その桃は何だかガタンガタン揺れながら流れていたような気がしますが、おばあさんは気にしません。

「おや、これは良いおみやげになるわ」

おじいさんには内緒だという事をすっかり忘れ、桃にとびつくおばあさん。

「ええい、こやつ生きが良いわ！」

暴れる桃を必死に抑えつけますが、桃は一向に止まる気配を見せません。
いや、桃が暴れるという表現は明らかにおかしいのですが、おばあさんは気にしません。

「むうう、貴様…いい加減にせよッ。　ぬぅん！」

ついに痺れを切らしたおばあさん、桃を粉砕してしまいました。
すると、なんと中から元気な中年がギャー！と飛び出してきました。
中年は飛び出した勢いを止められず、遠くに転がっていきました。

「っく、しまった…つい力を入れすぎてしまった…桃が…ワシの桃が…」

強すぎるゆえの悲劇を悔いるおばあさん。
二度とこんな悲劇は起こさせない、力の制御をおばあさんは心に固く誓うのでした。

すると、向こうの方から犬が近づいてきました。

「うお、領主様の馬車が！」
「何という事を、領主様！いずこにおわす！」
「馬車を襲ったのは誰だ！」
「あ、あいつだ！あの悪魔が…！」
「おのれ、良くもこのような狼藉を…許さん！」
「領主様を護れ！わーーー！」

近寄ってきた、犬と言う名の警史は何やらキャンキャン騒いだ挙句、おばあさんに襲い掛かります。

「ぬう、王朝の犬どもめ！さては此度の始末、貴様らの姦計か！許さぬううううう！！」

おばあさんはおばあさんで、何やら酷い妄想を頭の中に練り上げた挙句、警史を迎え撃ちます。
先程の誓いは何とやら、力の限り暴れるおばあさんはまるで鬼か悪魔。
警史も秩序の番人のメンツにかけて、全力で応戦します。

救いのない戦いは三日三晩におよび、遂におばあさんは御用となりました。
この悪魔は、今でもどこかの監獄の奥深くに囚われているという話です。


めでたしめでたし。





「めでたいなぁ、そりゃめでたい…」

もはや言葉もないシィは、何とかそれだけ絞り出します。

「家族の事を聞いただけで、こんな気分にさせられるとは思ってもなかったよ」

「秩序の崩壊が目に見えるようだわ…って、あれ？何処行くの？」

「本当だ、なんだか良い匂いが…雑炊？　ちょ、おーい！何処行くの！おーい！？」





以上、PT合流までの雑談より抜粋

つづく？