けっきょく、よく聞こえなかったけどマリア様とタリスベル教団のひとのお話は終わったみたい。マリア様、なんだか困った顔してる。
教団の人が、立ち上がったので、わたしはあわてて隠れなおす。

白服「では、わかっていますね？頼みましたよ」

白服の男が立ち去ると、マリア様は扉にもたれかかってため息ひとつ。

沈んだ表情で、マリア様がお部屋の方へ歩く。

わたしは、そのまま今日の作業をサボって礼拝堂でお祈りしながら考え事をしました。
戦うって言ってた。それって、リヴァランに教えてもらってることが役に立つんだよねね？
いつも、リヴァランはわたしのことほめてくれるし、マリア様が困ってるんだもの、力になりたいな。
もし、マリア様に拾われてなかったらわたしは、こうしていられなかったんだもの。恩返しをしたい。
マリア様になんて言おうかって、椅子にすわって足をぶらぶらさせながら考えてるうちに、ちょっと日が暮れてきました。

マリア様がサボってるわたしを探しに来たみたい。うまく逃げなくっちゃ。

ああ、目が怖い。

遮るようにマリア様が返す。

さぼってた作業を片付けたら、今日はお話しする時間がなくなっちゃった。
結局、次の日はマリア様に怒られて邪魔されないようにちゃんと作業を終わらせてからリヴァランの部屋を訪ねました。

ドアを開けると、部屋の中は旅の準備をしてたのかな？けっこう散らかってます。

リヴァランは荷造りする手を止めて話を聞いてくれる。

リヴァランと、もう少しお話しをしてから部屋に戻ったら眠くなっちゃった。
でも、明日の朝に出発だっていうから、わたしもついていく準備しなくちゃ、マリア様において行かれちゃう。

荷物は着替えと、いつも練習で使ってる刀。あとはマリア様にもらった魔法書ぐらいしかないから準備なんて簡単。
それよりも、どうやってついて行けばいいかな？普通に歩いていったら、きっとすぐに見つかっちゃうからこっそり隠れてついて行かなきゃいけないよね。
足をなげだすように座った間に置いた魔法書をめくりながら、いくつか使えそうな呪文を選んでページを広げる。

ゆっくり歌うように呪文をつぶやきながら、ゆっくりと自分の足に魔法の力を流し込んでいく。
それから、流し込んだ力を解放する動きのイメージをじっくりと刻み込んでいく。
こっそりついていくのに使えそうな呪文を、他にもいくつか仕込んだ頃にはもう眠くて、気がつくと眠りにおちていました。


翌朝

朝ご飯のあと、マリア様がしばらく孤児院を離れて教団のお仕事をしなければいけないから、留守の間、一番年上のお姉ちゃんのリーズルの言うことをよく聞くように言い残すと、馬車に向かって荷物を運び、慌ただしく出立の準備を始めます。

いまのうちに、あの馬車にもぐりこまなくちゃ。リヴァランが荷物を積み込んで馬車を離れた隙に、昨日の夜に仕込んだ通りに手を動かすと、音も立てずに、馬車のあたりの景色がちょっとだけずれる。それから、もう１つ。カカトを鳴らして早く走れる呪文を解放。

荷物を抱えて馬車の荷台に駆け込んで深呼吸。どこに隠れようかな？呪文だけじゃうまく隠れる自信はないし。

リヴァランのものらしい大きなバッグこれなら・・・。大急ぎで中身を抜いて潜り込むとふたを閉めて用意した最後の魔法でおまじないをかけて、じっと隠れる。
外でマリア様がわたしを探してる声が聞こえるけど、聞こえないふりをしてじっと隠れてるうちに昨日の準備で寝不足だったせいかいつのまにか寝ちゃいました。


そのあと

道が悪くなったみたいで、馬車がコトコト揺れる振動で目が覚めました。
体を伸ばそうとすると鞄にひっかかって動けない。

たまにマリア様がしゃべるのを聞きながらぼんやり隠れていると、突然馬車ががくんと揺れたその瞬間、何かにつぶされて思わず悲鳴が出ちゃう

ああ、見つかっちゃったかな・・・・