Another Story 商人のすゝめ—

何故このような事になってしまったのか。
それは当該者でも上手く言葉では説明出来ない出来事であった。

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今から始まります物語は、コミュNo.1132 【商人ギルド】タラゼドで起こった出来事です。
第三者、ENo.1132 スィナンさんの視点でお楽しみください。

また、PMのENo.1640巳南、ENo.1641大楠は関わっていないという事を明記します。
でっかい大人のおかん保護者いたらフラグ回収出来ちゃうからね。仕方ないね。にんにん。


【☆゜+　Thanks　゜+☆ 】
　・ ENo.1132 スィナン： http://ikki.x0.com/r/k/k1132.html
　・ コミュNo.1132 【商人ギルド】タラゼド： http://ikki.x0.com/r/c/c1132.html

許可を得て、お借りしました。ありがとうございます。

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目の前に居るは、中年太りのギルドの初老。
彼は意気消沈し泣きじゃくる少女（の装いをしている少年）を叱っていた。

「あのなァ…。いくらなんでも桁が違うだろ…？ケ・タ・がァ…。
　十が百になっちまったら、在庫になっちまうよォ…」

悩ましげに頭を掻き、言葉を詰まらせた。

「十が千としての発注はいくらなんでも駄目だろぉおおお…。
　ゼロの数字が二桁”も”飛んでるんだぞ…？にぃー・けぇー・たぁー。
　働いてる以上、確認漏れとお前の勘違いが通っちまってるじゃんよ…。
　…ホウレンソウどこ言った？え？ホウ(報告)！レン(連絡)！ソウ(相談)！」

「ひっく、ご…ごめんな…ざぃい…」

少女は落胆し、ボロボロと涙を床に零した。
後ろには詰み荷にされた茶葉入りの袋が並んでいる。

「なぁスィナンよぉー…。俺ァそこまで酷いこと言ってるか？
　泣かれ過ぎて会話になら無ェ。逆に俺の心が痛むんだが…。」

「あ？…んー、おやっさんの顔が怖ぇーんじゃ無ェの？」

「あんだと？！」

このやろう！と乱暴に青年の頭を拳で突いた。

「いってェ…。なんで俺が…。つぅか、下の失敗は上の責任じゃねーの？」

軽い突きではあるが、急にど突かれて痛くないと感じるわけがない。
突かれた箇所を手で擦りながら、不服そうな表情で反感した。

シャラン　　シャラン

金属の装飾同士が合わさる音が鳴る。
スィナンが嗚咽している少女に近付き、呆れながらも優しく話し掛ける。

「いきなりギルドの仕事を頼んだのは悪ィかもしれ無ェけど、アンタもアンタだよ。
　ずっと上の空で浮かない顔をし過ぎだ。嬢ちゃん。」

「ひっく…！ひっく…ずびま…ぜん…」

スィナンはやれやれと、溜め息を吐いた。

「なあ、おっさーん。おやっさーん。ギルド長ー？」

「3回も呼ぶな！聞こえとる！」

「おやっさん、なんか案は浮かんでいるんじゃないの？処罰とかしちゃう系？」

「処罰だァ？んな面倒くせぇのするワケが無ェだろ！」

「ふぅん」（そっか。大丈夫なんだ。）

「そんなもん、捌けばいいだろ。売り捌けば。」

「はァ？！」

（今何つった？なあ？）

「あのなぁ、おやっさん。売るって言ったって、量が多いわ、物には期限があるわ、
　今朝の市場の調べだと価値が下がってきて無ェか？
　仕入れ値から見て赤字…とまでは言わないが、儲けにはなら無ェんじゃねぇの？」

「ああ。なら無ェな！だが！作戦がある！いい方法があんだよ！」

「へぇ。どんな？」

スィナンは面白そうに聞き入った。

「タダで配る！」

「はァ！？」

（なに言ってんだよ、このおっさん。）

「物には期限があるってお前さっき言ったよな。なら出来る限り減らさ無ェとな？」

「大赤字じゃん。それ」

呆れつつも、ツッコミを入れる。

「だろ？だが全部を売り払うワケじゃあ無ェよ。
　需要と供給。茶葉の量なんざ湯につけて配る分には少量だろう。
　その味が流行れば人は求め、需要が増える。流行ればいいだろうが論（ロン）だ！」

「………それ、上手くいくか？」

「あァ？！俺を誰だと思ってやがるんだ！お前は！」

「場は既にあるモン使ってやってみればいいだろう！
　なあスィナン！お前がしっかり見届けてやれよ！がっはっはっはっは！！！」


—おやっさん曰く、風が吹けば桶屋が儲かる作戦。…だそうだ。
　意味あってんのか？ソレ？

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—後談

スィナンはギルド長に尋ねる。
「ところで、Tポイントってどういう意味？なんの略称？」

「ん？ああ。名前の頭文字よォ！」

「は？」

「TATSUKI ポイント」

（うっわ、…えげつ無ェー。）

なお、本来の意味を知らない少女は「Tea」をヒネたものだと勘違いしている。
いつかその意味を知る日が来たら、生き恥を晒し、へこみ、赤面し、蹲るだろう。


コミュNo.1639 茶： http://ikki.x0.com/r/c/c1639.html

武器を構えた兵士を見、心細そうに嘆く。

人の声に肩をびくりとふるわせた後、人がいるのかと周囲を素早く見回し、視線を後方に振る。

あかんかった。この流れは知っている。
汚らしいものを見るような目で見られるか、悲鳴を上げて逃げだされるか、ボコられるか、不審者だと捕まえられて憲兵に突き出されるのだ。

どれも嫌だった。できれば穏便に去りたい。ならばどうするか。

怪しくないように、無害な人間であり敵ではないことをアッピールするために笑顔を作って笑いかけてみた。
うまくいっただろうか。

煌びやかな宝石商の露天前にて——

誰かへの土産選びだろうか、品を吟味するあなたの背中にトンと何かがぶつかった。
振り返ると、そこには黒っぽい服装をした痩身の男が立っている。

言いながら離れたところをちらと見遣り、呆れたように肩を竦める。
視線の先では、大柄な金髪の男が店員と思しき女性に
人目も憚らずナンパを始めている最中だった。

至極中性的な容姿のあなたを事も無げに男子と看破した男は、
つと薄青の眼差しをあなたが大事に持っていた耳飾りに向けると、
一瞬きょとんとした後に、にっこりと笑みを浮かべた。

そんな軽口と共に肩をぽんぽんと叩き、するりと脇を通り過ぎると
男は店主と会話を始め、何やら悶着を起こしていたようだが、
やがて連れらしい男と一緒に雑踏の中に消えていった。

——去り際、すれ違いざまにこんな囁きをあなたに残して。

（ふと、腰に下がった竹光に目が留まる）

驚いてしまって変な声が出そうになりました。

そういってめいいっぱいおじぎしました。