集められた人々が一斉に攻城を開始し、各々選んだ道を進み始めたみたいですね。
私はあまり険しくなさそうな道・・・綺麗な小川があったので、その川沿いを進むことにしました。水場が近くにあれば何かと便利でしょうし。

少し進むと、小川の畔に佇む人影・・・いえ、人魚さんでしょうか？
心なしか冷たい表情で先行く一揆の参戦者達を見ていました。
その人魚さんはどうやらエンブリオのようで、この世界ではエンブリオとの契約が貴重な戦力となることを既に身を以て証明していた私は、この先の戦いに向けて是非とも契約をさせていただきたいと思いました。
エンブリオに認めてもらうためには力を示す必要がある・・・そう自問自答して再確認した私は、その人魚さんに手合わせを願いました。
それを聞いた人魚さんはより表情を暗くし、冷たい眼差しで私を見つめ・・・それから大きなため息を１つついて、戦闘を開始してくれました。
その結果私が勝利し、力を示すことは充分にできました。ですが、それはその人魚さんにとっては全く良しとはできないやり方だったのです。

暴力で物を解決することを嫌い、静けさを好むその人魚さんは今回の一揆という騒動そのものを迷惑だと思っていたようです。それを聞いてようやく、私は戦う前の人魚さんのあの表情を理解しました。
そこに私が・・・本当にひどい目に遭わせてしまいました。
なので私は、改めてちゃんとした説得・・・いえ、話し合いを試みることにしました。
突然、配慮の足りない戦闘をさせてしまったことへの謝罪。この一揆という騒動が起こることになったきっかけ。私がこの一揆の先に見ている想い。そして、人魚さんが望むのなら私は契約などせず、このまま立ち去る意思もあるということ・・・他にも色々、覚えてないくらい、話せることをとにかく思い付くだけ、夢中で話しました。
その結果・・・人魚さんは私に力を貸すことを決めてくれました。
戦闘が終わるなりすぐに相手を回復を施したり、こんなことで涙を流せるような人間となら悪いようにはならないだろうし、と仰っていました。・・・気付かない内に泣いていたんですね、私。

契約をさせていただいた後も、歩みながらその人魚さんとお話をしました。
私の故郷のこと、兄のこと、メルンテーゼに来る前に使えた魔法のこと。
人魚さんの故郷のこと、遠いお友達のこと。昔、しつこく言い寄ってきた人間の集団を追い返し、それでもなんとか認めてもらおうとした人間達に度々襲われるようになり、遠く離れたこの地へとやってきたこと。それが騒動や暴力を極度に嫌うきっかけになったということ。
そんな話をしている人魚さんは、契約前とは打って変わって明るい表情を見せてくれるようになりました。
もし、一歩間違っていたら人魚さんがその笑顔を他人に見せることが2度と無くなっていたんじゃないか、と思うと・・・恐ろしくて考えたくもありません。話が通じて本当に良かった・・・。
今度からはもっともっと、しっかり注意していかないといけませんね。それに関しても人魚さんも一緒に注意してくれるとのことでした。

人魚さんとの契約後、しばらく進んでいると仲間を募集している方・・・ペガサスという名の機械さんがいらっしゃいました。
エンブリオに力を貸してもらっているとはいえ、戦う身は１つのみ。ならば仲間がいるに越したことは無いと思い、応募させていただきました。
ペガサスさんはとても大きくて、それでいてとても機敏な動きをできるようでした。詳しくはわからないのですが、「ビーム兵器」というものを得意とした戦い方をされるようです。
仲間に入れていただくことはできましたが、足を引っ張るような真似だけは絶対に避けないといけませんね・・・機動力を主軸に置いた戦い方をされるのであれば、気に掛けるべき存在はいない方が明らかに動きやすいことでしょう。
それでも仲間を募集しているということは・・・それにより犠牲となる機動力の一部を上回るだけの戦力を期待していると見て概ね間違い無いと思います。それに応えることができるかどうか・・・期待を裏切らないように頑張っていきたいところですね。
2人になってからは小川から少し離れて平原を進み・・・今度はエンブリオやモンスターではない、兵士が私達の前に立ちはだかりました。
いよいよ一揆としての本当の戦いが始まりそうですね・・・！
絶対に、負けません！