ラルフと名乗る男との戦闘になんとか勝利した。
その後、支給品だと言いながら妙なものを渡された。
これは何なのだろう。
などと思っている間に、既に二人は居なくなっていた。
強引にでも引き止めて、この状況のことを聞きだすべきだったと後悔
したが、最早後の祭りだ。
数々の疑問や不明点は多いものの、それらは一先ず捨て置いて状況の
整理をしなければ成るまい。

「人物データベース検索起動…………検索ネーム[パラダイス]……
　……該当データ無し。検索を終了。……どういう事かしら？」

私のデータベースは、歴史上の有名人などはほぼ網羅されているはず。
漏れが在るとしたら製作者である彼の職務怠慢だろうが、あの人の性
格からすれば、それはまず考えられないことだ。

「王の名前といっていたけれど、違うのかしら……。それとも本当に？」

考えられる状況は二つ。

一つは、何らかの事故により別世界へ来てしまった。
もう一つは、誰かの意思により別世界へ来てしまった。

同じ別世界であっても、両者では意味合いが全く異なる。
帰還方法が在るか無いか、だ。
意思が介在しているのであれば、任務をこなせば帰還できる目がある
分、まだ楽。しかし、前者であった場合、自ら動いて帰還方法を模索
しなければ成らない。面倒なことこの上ない。

目に見える範囲での手掛かりは、あの場所以外に見当たらない。
そして救難信号に対する応答は未だにない。
ならば、見えている罠だったとしても、進む以外にないだろう。

「ま、考えていても始まりませんね。とりあえずはあの『城らしきも
の』を目指して動くとしましょう」

面倒くさそうに言いながら、彼女は歩き始めた。