空から一直線に舞い降りて、狩った大きな獲物は……どうやら食べれるものではなかったようだ。

美味そうな大きな魚だと思ったソレは、人魚の一族の男で、器用に人の言葉を操る者だった。


残念だ。

言葉を用い、意思が疎通できる相手は食らうべきでないと、耳元で風が言う。

風がそう言うのならば、食糧にはできない。

仕方がない……

食糧にできない代わりに、旅の伴として捕まえておこう。

どうやら自分とは違って、陸に住まう人間の理についても事前に調べているようだし。

この聡そうな人魚は有用だろう。



そして、ケ・チェスポレカは、人魚の男に旅の動向を持ちかけた。

有無を言わさぬ口調で——

一瞬体を震わせてケチェの方をみやる。

資材を受け取り、ケチェの爪を手にのせる。

見たことのない風貌の亜人に目を丸くする。
人間の体と鳥の翼を併せ持った彼を、少々不躾だが舐めまわすように見た。

そっと右手を差し出しながら、自分は敵ではないというように、唇から柔らかい音を出してみせる。

あまりに予想外の出来事に頭がついていかず、しばし呆気にとられていたが、その間にもどんどん高度が増していく。

顔にあたる冷たい風にはっと我に返り、五木は必死にもがきだした。

状況を把握しようと目線をぐるりと敵に向けると

イケメンだった。ああこれならいいかもしれない、と思った彼女から発する邪気を感じたのか、その瞬間に五木を捕まえていた者の爪が緩み。

そして五木は落下した。

羽音に気付いて振り返ると、旅を共にする有翼人の青年の姿があった。言葉数が少ない彼の緋色の瞳が少女を捕らえる。

その眼差し鋭く、けれど温かい瞳をしていると少女は思った。恐らくは自分の身を案じてくれているのだろう。

空へ舞い戻る彼を、少女は微笑みながら見送った。

しないでほしい
とつぶやき、珊瑚色の鎌を構える

対峙した面々を舐めるように見回し、ニィと口元を歪める。

アレジッタを力強く指差し、皆にも伝えようとする。