ファオジェについて私が語れることは少ない。私の初期の辞典的データベースからは彼の項目は欠落していたし、私もそれを埋める努力はしてこなかった。感覚器のテストのときだろうか、助手に対してもう少し大きな声で喋れと命令する男の声、それが、ファオジェについて私が固有に所持している唯一のデータだ。本当はもう少しそのようなものが残っていないとおかしいはずなのだが、きっとファオジェが消去したのだろう。

　ニゴットについては、彼の直接の知り合いを除けば、彼のデータを私は他の者よりも多く持っているのではないかと思う。そのことは、彼について私が十全に語ることが出来るということを保障はしない。政治家としての彼を私は論評する立場には無い。私が語ることが出来るのは、私の機構を分解し清掃し組み立てるときの彼の手つきと集中、オイルとグリスの塗り方の癖。彼は自分の収蔵物に他人が手を触れることを嫌い、たった一人で手入れをしていたが、それが彼自身での気晴らしになっているようでもあった。彼は私の構造についての自分の知識の限界を知っていて、私のクリティカルな部分にはけして触れることはなかったが、時折、契約エンブリオのエネルギーを私に与え、私は彼の言葉のとおりに行動した。

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　まあ、男の子のやることは変わんないね。

（謎の存在に問い掛けようとした言葉は、途中で子ども達の声に遮られた）