僕はレスティア＝ノール。

あまり公言はできないけどちょっと特殊な人生を歩んでいる12歳の少年だ。
さて、今の僕はというと……

寝ている間に何やら白い謎生物に乗られていたらしい。
突然の事に思わずぼけーっと謎生物を見る。

……と、いつまでもそうしている訳にもいかないので気を取り直して口を開く。

挨拶をしてみると、少しの間の後元気な返事が返ってきた。

しかし、このままでは何が何だかわからない。
まずは状況を把握する必要がある、そう思った僕は頭の中でコードを紡ぐ。

そのコード——『システムコール』によって僕を構成する『システム』の対話インタフェースが起動する。
僅かな起動シーケンスの後、聞きなれた声が脳内を巡る。

システムにそう依頼し、僕は再び目の前の謎生物を眺める。

傍から見てぼーっとしているように見える僕を不思議がっていたようだ。
僕は間をごまかすように白い謎生物を軽く撫でる。

謎生物は目を細めて身体を摺り寄せてくる。どうやら撫でられるのは結構気持ちいいらしい。
しかし、それはそれとして……

こうして『システム』からの報告を待つ間、僕はこの謎生物と戯れていた。



〜・〜・〜・

僕の問いに、謎生物はうんうんと頷く。
暫く戯れて分かった事は、この子はこちらの言葉を理解できているらしいという事だった。
当然、僕の方はこの子が何を言っているのかは分からないけど肯定・否定などは仕草や声の調子で何となく理解できた。

謎生物はそう言うと、僕から離れてどこかに行ってしまった。
その見た目に反して結構な身のこなしだ。

『システム』の報告を簡単にまとめるとこんな感じだった。

・ここは『メルンテーゼ』、通称『元素の世界』と呼ばれている世界らしい
・世界の特徴として『エンブリオ』という特殊な力を持つ生命体が存在するらしい
・住民達は『エンブリオ』と共生し、また契約し力を借りて生活しているらしい
・契約にはこの世界特有の花である『ネクター』の花びらをささげる必要であるらしい
・しかし最近誕生した新王が『ネクター』を独占を始めたらしい
・このままでは死活問題となるという事で住民達が周辺世界からの助力をも要請し、大規模な一揆を開始したらしい

……しかし、この短時間でよくここまで調べたものだと感心する。
と、そんな事を考えていると、先程の謎生物がひょっこりと現れて戻ってきた。
よく見ると、何やら赤い花を咥えている。

おや、そうなんだ。と答えるよりも早く謎生物は僕の下に駆け寄ってきて僕の前に赤い花を置いた。

そう言って何かを待つような仕草をする謎生物。
僕はネクターの花から花びらを一つちぎり、捧げる。




その瞬間——謎生物の身体が淡く輝く。

その光は何かの羽——そう、先代達の記憶にある妖精の羽のようだった。




……光は程なく消え、代わりに目の前の謎生物にどことない親近感を感じるようになった。

システムと意思疎通を取り、僕は手近に落ちている物から武器を造る事にした。
何を造るか悩んだ後、刃がついてなくてそれなりに取り回しが利くだろうという事で棍に決めた。
刃のない武器を選んだのはこの謎生物——とりあえずは『ふわもこ』と呼ぶことにした——を考慮しての事だ。

こうして、僕はふわもこと共に人の集まる方に向かった。



〜・〜・〜・



小一時間ほど歩き人手のある所にたどり着くと、何やら人だかり……いや、行列ができていた。
何事だろうと列に並んでいる人に尋ねてみると、どうやらこの列は例の『一揆』に参加する人たちの列らしい事が分かった。
列の長さは途方もなく、数百……いや千人近くはいるように見えた。

その様子をぼーっと見ていると、ふわもこが僕を押して列の最後尾に導く。
どうやら一揆に参加してほしいようだ。
もしかすると初めからそれを期待していたのかもしれない。中々の策士だ。
とはいえ元々短期的な目的がないし、また僕自身の目的を顧みても割といいのかな……？

そんな事を考えながら列に並び、順番が回ってくるまでしばらく待つことにした。



〜・〜・〜・



どれくらい待っただろうか。
長かった列も捌かれていき、ついに順番が回ってきた。
その直前でふと後ろを見ると、僕が並んだ時と同じかそれ以上の列が伸びていた。
この『一揆』には魅惑的な何かがあったのだろうか……？

そんな事を考えながら僕は目の前の二人、ラルフさんとルリアンナさんと対峙する。
話を聞くとどうやら参加試験のようなものらしい。
確かに王に反旗を翻すからには穏やかには済まないだろう。

ラルフさんを前にした僕は、軽く目を閉じ呼吸を整える。

当然ながら先程この地に生まれた僕には戦いの経験はない。
しかし、僕を構成する先代達の知識・経験が僕に戦いの力を与えている。

それに今はふわもこもいる。
エンブリオの力がどれくらいなのか分からないけど、ちょっとした心強さを感じる。

僕達は頷き合い、ラルフさんに向かっていった——




〜・〜・〜・

今、僕達はとある場所に向かっている。
これから『一揆』を進める仲間との合流場所だ。

結論を言うと、ラルフさんの試験は無事合格となった。
ラルフさんも本気を出している訳ではなく、僕自身もそれほど弱いわけではない。

しかし実際の所はふわもこの力のおかげで圧倒できたと言っていいだろう。
僕はエンブリオの持つ大きな力にただ驚きを感じるだけであった。



さてそれはさておき、今日から本格的な『一揆』活動だ。
新しい仲間を迎えただ突き進むのみ——


——であるが、これから何があるのやら。

フェアリードライバーのバックル部分を展開すると、電子音と共に穏やかな光を放ち始めた。

フィリアスから宝玉を受けとり、バックル部分にセットする。
シュウスケの全身に強化骨格が瞬時に転送され、戦闘準備が完了した！

フェアリードライバーのバックル部分を展開すると、電子音と共に穏やかな光を放ち始めた。

フィリアスから宝玉を受けとり、バックル部分にセットする。
シュウスケの全身に強化骨格が瞬時に転送され、戦闘準備が完了した！