ユリアは溜め息をついた。
少年時代はただひたすら自身のため、己が己であるがためだけに振るい続けてきた剣だった。メルンテーゼを訪れる事が決まったのは、そうして鍛えて来た腕を国に捧げると誓いようやくそれが叶おうとしていた矢先の事である。己の目指して来た物とはなんだったのかと少し途方に暮れる気持ちは拭いきれない。

　気候や空の色、木や土の匂い、人の営み、時の流れにいたるまで、『異界』と呼ぶには拍子抜けする程によく似た“環境”である事は確かだった。とはいえ世界線を超えて突然見知らぬ土地へと放り出された身としては、この生意気な契約エンブリオの他にまともに頼れる相手すらいないのは心細い。
　メルンテーゼに来て早々、全身金ぴかの鎧の男に声をかけられ同行者が増えたは良いが、信頼のできる相手かというと今の所はなんとも言い難い。子供のように無邪気な振る舞いは警戒するに値しないようにも見えるが、その人なつこさが逆に鼻に付くような感じもする。
　とにもかくにも、慣れない事や先の分からない現状への不安は募るばかりであった。

　一人と一匹（？）の紡ぐ物語は、まだまだ始まったばかりだ。　


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たのしいよ＼(◉▿◉ )／

アニマはちょんちょんと何かを指し示している。