肩に担いだ鎌が僅かに耳障りな悲鳴をあげている。
それは彼の機嫌が悪い証拠だ。

それはそうだろう。

あまりにも呆気のない力試しだったからだ。
これには彼同様、鬼も苛立ちを隠そうとはしなかった。
当の二人組はさっさと他の組の力試しに向かっていったため
言いようのない苛立ちが二人を包んでいた。

「……っち。こいつの機嫌が悪ぃと後々面倒なんだから勘弁してくれっつの」


≪鎌と意思疎通できるってのも不思議なもんだな≫
<っていうか、その鎌なに？生きてるの？>

ふわふわと鳥が二人、鬼の前を浮遊する。

「さーーーな。どーでもいいだろーが」

鬼は吐き捨てるように呟いた。

「…で、だ。さっきの話の続き、お前等一体何なんだ？何で俺に憑いた」

<んーー……。僕達の物語はとっくの昔に終わってるんだ
だから、ここで長々と説明する気もないし。知ってる人が見たら僕たちの事を思い出す
それでいいじゃないか>
≪あとお前、長々と人の身の上話聞くタイプでもねーだろ≫

…それもそうかと鬼は思いなおす。
どうやっても、この鳥達は離れる気がないようだ。
それならそれでいい。と半ばどうでもいい気持ちで歩き出す。

面倒事も、誰かの心の中に入り込むのも
入り込まれるのも、ごめんだ。
…気持ち悪い。

≪鬼ごっこで負けたんだよ。俺達は≫
<鬼に捕まっちゃったんだよねー>

「…で、それが俺と関係あるわけか？」
≪<ううん、全然ないよ>≫


…ムカつくから一発づつぶん殴ってやった

（見上げながら勝手なことを独りごちている）