おじさんからのテストが終了すると、ホッと一息ついた。
なんとか勝てた…エンブリオ、僕の友達の力を借りられたから勝てたようなものだ。
でも、これからどうしよう。
見渡す限り、辺りは人で溢れかえっていて、どうしようも出来ない。
こんな時に頼りになる従者が傍にいてくれたらー

それはいて欲しいという願いでもあった。
こんな訳の分からない場所でポプリと歩き回っていても
迷子で泣いてしまうのが分かっているから。

「どうしたの、一人で」

そんな時一人の青年に声をかけられた。
彼の隣にはエンブリオ、なのかは分からないけれど
壁？みたいなものが居た。

「あ、あの…」
「えーっと、君みたいな小さい子も一揆に参加するの？」
「えっと…」
『ちゃんと喋ろ、馬鹿坊ちゃン！』
「なっ、僕馬鹿じゃないもん！」

抱きあげていたエンブリオが人見知りの坊ちゃんをクスクスと笑い
それにムキになり反論をする、小さい子供達の喧嘩だ。
でも、そのお陰で話せそうな気がしてきた。

「あのね、お兄さん。僕人を探しているの」
「人ってどんな方ですかー？」
「…壁が喋った！？」
「違うよ、ナズナちゃんは…石壁だよ」
「どう違うの！！？」
「まあ、エンブリオって思ってくれたらいいよ」
「それで人ってどんな方何ですか」
「えっとね、こんな」

言うと目の端を引っ張りつりあげる。

「目つきが悪くて前髪の真ん中にオレンジのメッシュがかかった人」
「うーん…俺は見てないな。ナズナちゃんは？」
「私も見てないですぅ…」
「そっか…ありがとう！えっと」
「俺は江田睦月、むっくんって気兼ねなく呼びなよ」
「ありがとうむっくん！僕は迦楼羅、一色迦楼羅」
「見つけたら言っておくから！」
「うん」

最後に見つかるといいね、と一言告げられ頭を撫でられて彼と別れた。
知らない土地でもいい人はいるんだなあって思えた。
その後も辺りを探してはグノウを見つけようと試みるが
早々見つかるわけもなく、時間だけが過ぎていった。

ポプリにわーわー弱音を吐いて俯いていると
足音が近付いて目の前に来るとその足音は止まった。

顔を上げるとそこに立っているのは見知った顔だった。
目つきの悪い面構え、スラリとした長身
それに見覚えのない足元にいる小さな紫の頭巾を被った…何だろう
それでも、僕は…

「探しましたよ、坊ちゃん」
「ぐ、グノウ〜っ！！」

心細かった、だから思わず抱きついてボロボロと涙を零した。
知ってる人がいてくれて、頼りになる従者が傍に居てくれてよかった。
あんまりにも泣いていたら「汚いから鼻水と涙拭いて下さい」とハンカチを渡された。

『ほら、お前があんまりにも遅いから坊ちゃん泣いちゃったじゃんカ』
「…お前は、坊ちゃんのぬいぐるみの」
『お前じゃない、ポプリだヨ！デカブツ従者！！』
「…坊ちゃん」
「なあに？」
「教育上宜しくないので処分致しましょう」
「駄目だよ！ポプリが居ないと僕おじさんに勝てなかったんだから！！」

騒いでいるとグノウの足元でちょこちょこと動いている子がいた。
これ、もしかして…

「グノウのエンブリオって…この子？」
「……」

「これからどうされますか？」
「うーん、と…よくわかんないけど此処の王様は悪い人なんだよね」
「まあ、本当かどうか分かり兼ねますが」
「だったら、王様やっつけよう？」
「…は？」
「やっつけたらきっとどうにかなるよ！」
「……」

従者からはため息が一つ漏れた。

ENo.176 Gunow-Swarold&1302江田睦月お借りいたしました。

あなたの平原における叫び（エリアメッセージ）を聞きつけたのだろうか、
たまたま近くを歩いていた眼鏡の女があなたに駆け寄ってきた。

眼鏡の女は少年の周りをキョロキョロと見回すが、
それらしい人影は見つからない。

そう言って女は微笑んで、
肩に下げたカバンからハンカチを取り出し、
あなたに差し出した。

ビブリオバベルと名乗った女の後ろに、
いつの間にか樹が立っていた。幹の真ん中に目がついていて、
あなたとビブリオバベルのことを見つめている。

40cmほどの大きさの人形が自らの足で歩きながら近づいてくる。

スカートの裾をつまみ一礼。

人形が急に宙へと持ち上げられる。
つまみ上げたのは、身長は170前後、青髪の耳長。