ネクターを支給する条件、と銘打たれたにしてはいやにあっさり決着がついた。
力加減はされているのだろうが、お互い一手、二手見せた所でラルフは拳を下ろしたのだ。
後に控えている参加者の数を見ればそれも仕方ないように思えるのだが。

結果から見てみると、試験に合格出来ず帰る者は一人としていなかった。
いや、もしかすればいたのかもしれないが、少なくとも俺が見ていた限りでは
試合をした全員にネクターが行き渡ったようだ。
戦う前に抱いていた疑念は更に膨らんだ。それだけではない。

試合後、ルリアンナは堂々と「王の討伐」を宣言した。
こいつは本当に王を倒すつもりでこの軍勢を集めたらしい。
初めからふるいにかける気などなかったのだ。

果たしてこのまま王城へ攻め入っても大丈夫なのか？
大きな選択を迫られているような気もするのだが、もう一つ、
ルリアンナの発言には不可解な所があった。
王城の内部を知っているようだが、もしや彼女らは王家の関係者なのだろうか。
そうするとこの一揆がもつ意味も大分違うものになってくるのだが、
まあ、今はただの推測でしかない。


…
周りに見える、異世界から招かれたとおぼしき参戦者は一見でメルンテーゼの住民と
区別がつかない者もいれば明らかに異郷から来たと分かる者もいる。
その全てに警戒するというのも難しいが、彼らが何の目的でこの地へ足を踏み入れたのか、
それが分からない以上安易に信用するのも危険であるだろう。

油断をしないように、尚且つ彼らと協力する事。俺に出来るだろうか。

続けて肩に留まる鳥を指し、

歩み寄る青年に気がついたグリゴリは、隠す様子も無く嫌な顔をし、露骨に一つ舌打ちして、馬鹿にしたように大袈裟で大雑把な礼を返した。

過去に顔を合わせる程度の事はあったかもしれない。
だからこそ相手の顔を見て誰だか分かったのだが、知人と言えるほどの関係でもない。

赤毛の青年の肩にいる小さな鳥を見るなり、アールは勢いよく飛びついた。

しばらく自分の相棒であるイヌワシの紹介を早口で、しかしうっとりと話してから、
ようやくアールは青年と向き合った。

泣いてない、これは目から汗だと言いながら精一杯笑顔を作って見せる。

差し出された右手には応えず、じっとヘクターの顔を見ている。

結びついた記憶があったのだろう、表情がパッと明るくなる。

デリフィーンも右手を差し出し、握手を交わした…女にしては握力は弱くないようだ。

少女の旅の連れに話しかけている赤毛の青年の顔を、少しだけ首を傾げながら見上げている。

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・

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少女は突如素っ頓狂な声をあげた。

少女は慌てている。
非常に慌てた様子で連れの男の服を必死に後ろに引き、前に立つと何度も頭を下げた。

そう言うと、少女はにこやかに微笑んだ。