ラルフのおじさんと『遊んで』、ネクターを貰った。
この赤い花、私がこの世界に着たところの近くに咲いていたのだけど、それは偶然に偶然が重なったものだったらしい。

「うーん、とりあえず、これから王様の手下っぽい人達を斬ればいいわけだよね！」

判別方法も分からないから、とりあえずそれっぽい人を考える。

「まずは武器を持っている人だよねー」

隠していたら見えないから、外に吊るしていたりする人を狙おう。

「あとは、なんか強そうな人でいいかな」

王様の下についてるんだからある程度強いはずだもんね。
だから、丁度あそこにいる赤い服のお兄さんなんかは丁度良いと思う。
剣を二本吊るしているし、きっと強い。
そうと決まれば早速……。

「あはっ♪」

剣を肩に担ぐようにしてから走り出す。
地面を蹴って、前に跳ぶようにして走る。
それから勢い全部を使って、体全体を振り回すように剣を横になぎ払った。

「あはぁ……♪　やっぱりだぁ……♪」

強い。
胴をすべて持っていくように、力任せになぎ払ったのだけど。
しっかりと、

「お兄ちゃん、強いんだね……！　ね、もっともっと……『遊ぼう』よぉ……っ♪」

受け止められた。
二本の剣で挟み込むように、止められている。
体をさっきの逆に捻る。
剣を体に巻き込むようにして引き戻してから、そのまま体を一回転させて逆側からのなぎ払い。
今度は、後ろに跳んでよけられた。
だから、なぎ払いの為に前に出した足、その足首だけで体を前に跳ばす。
なぎ払いの勢いをそのまま利用して、体を捻る。
跳びながら体を捻った私は、そのまま再びなぎ払う。
だけど、止めれた。
最初の時と同じように、双剣で挟み込むように止めていた。

「あはぁっ♪」

楽しい。
楽しい、楽しい楽しい。
充足していく感覚が体を灯す。
けれどもそれに冷や水をかけるのはたった一つの疑問。
止められた剣は、押し返そうとする動きも何も感じない。

「あれ……？」

動きを止める。
相手は動かない。
敵意も感じない。
……もしかして。

「……ほぇ？」

間違えた？


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その後、どうやら襲い掛かった彼の話を聞くところによるとお嬢様の護衛をしていたらしい。
一揆には、私と同じ側の立場ということだった。

「ごめんなさい。つい、王様側の人だと思っちゃったの」

頭を下げる。
戦うのは楽しいし、興奮するけど見境なしなのは駄目だよね。
ちゃんと相手を選んだり、許可を貰わないと。

「ううん、それじゃぁどうしようかなぁ。一人で動くのも難しそうだなぁ」

何しろ目の前の……渡来葉月と名乗ったお兄さんみたいに強い人が一杯いそう。
私一人じゃつらそう、凄く。
そうなると、誰か一緒に戦える人を探さないといけない……と思ったところで。
目の前の青年をじっと見る。
……身長あまり変わらないので、見つめやすい。
うん、ずうずうしいお願いかもしれないけど、言ってみようかな。

「ねえ、お兄さん。私を護衛として使う気は、ないかなー？」

そう聞いて見る。
……考える仕草を見せるあたり、本当にいい人なんじゃないかな。

「護衛じゃなくて、仲間ということなら」

考えていわれた言葉を、理解するのに数瞬かかった。
断られるかもしれない、そう思っていたから。

「えっと、それでいいの？　私、こんなだけども……」

その言葉に頷いた彼を見て、私は笑う。
ただ、ただ嬉しかったから。
『一人』で過ごそうと思っていた。
だから、護衛という関係でよかった。
だけどこの人は、そうではなくて仲間という立場を求めてくれたから。
あんな姿を見ても、そういってくれたのだから。

「ありがと、お兄さん！　そうだ、名前言ってなかったね」

こうして、この名前を名乗る時なんてこないと思っていたのだけど。

「私の名前は、アリエス。今はそう名乗ってるよ。よろしくね！」


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〜どこかに伝わる御伽噺〜


昔、昔のお話です。
あるところに一人の青年がいました。
彼は、ある家の執事を務めていました。
彼は元々捨て子で、自身を拾ってくれた主とその息子に感謝を抱いていました。

そんなある日、戦が始まりました。
主が騎士の家だったため、戦場に駆りだされることになりました。
しかし、主は病気を患い床に臥せっていました。
それをみた主の息子は、自らが務めを果たすべきだと言い、戦場へと向かいました。
あわてたのは青年です。
心得がない彼が出るのならば、それを護る者がいなければならない。
そう思い、彼は剣をある鍛冶屋に依頼しました。
戦う技術のない自分が戦うならば、自分の力を生かすべきだと。
それを最大限生かせる剣を依頼したのです。
そうして出来上がったのは、全長2mの剣でした。

彼はそれを使い戦場を駆けました。
騎兵であれば馬ごと切り伏せ。
数多の槍兵であればその槍を切り払い。
弓兵であればその矢を刀身で受け。
前に出れない、主の息子の代わりにと、戦場を駆け巡りました。
彼には、救われた命を賭けてでも返したい恩があったのです。

その苛烈な戦いぶりに、Tit—　が守護を授けました。
彼はますます、戦場で戦果を発揮しました。
しかし、敵方も彼を警戒しはじめました。
そうして、策を巡らせた敵方は彼を要する部隊に対して追討戦を仕掛けることに成功しました。
青年は、ただ一人残り戦いました。
昼夜を問わず、ただ、ひたすらに。
結果、その部隊は逃げることが出来ました。
彼一人を、犠牲にして。
その後弔い合戦とばかりに、主の息子が指揮を取り戦を終結させることが出来ました。
ただ一人、最後まで戦い抜いた忠臣を思い、彼は賢君になることを近い、事実そうなったといわれています。

なお、彼の持っていた剣を敵兵が回収しようと思いましたが、あまりの重さで持っていくことが出来なかったようです。
大の男が何人も集まって一本の剣を持ち上げようとしましたが、地面に吸い付いたかのように全く持って動きません。
結局、剣の回収は諦めてしまいました。
つまり、Tit—　の祝福を受けたその剣は、今も戦場に眠っているのです。

葉月は眼鏡を拭いている。

渡来氏含め、
集結したメンバーを一瞥してからミルフィーユは前に歩み出た。

突然そんなことを語り始める酔っぱらいの少女。
開幕から、すでに酔っている。

なお、エシャロットも小柄な割には
そのいびつな形をした大鎌を軽々と持ち上げている様子であった。

長刃を振り、血を拭った。

片手でスカートの裾をつまみ、恭しく一礼。