レーネフィア記　Af.5017.2D.20,世界移動から二日目

「…………」

ウィスプと私は、王城前の広場……そのど真ん中で睨み合っていた。
理由は簡単。先ほどのラルフとの戦闘試験での事である。

「あなた……さっき何をしたの？」

特に私は何もしていない。うん、覚えがない。ただホーリーライトを使っただけだ。
いや、だってまさか光弱点持ち吸血鬼に聖なる光ぶち当てるとは思わないじゃない。
思わぬフレンドリーファイアに浄化されそうになったりしたけど私は元気です。
いやごめん、やっぱりちょっとふらふらする。
一応結果としては回復したけれど、正直痛みに見合わないと思う。

「あなた……何か恨みでもあるの……？」

じぃっとウィスプの姿を見つめる。

問いかけても、ウィスプはゆらゆらと揺れているだけだ。というか喋れない。

「………………」

次の刹那。
光の精霊と吸血鬼の少女は交差する——！


The truth is not always the same as the majority decision.

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レーネフィア・ディ・ステラ
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VS

▼レーネフィアの行動！
　通常攻撃！
　ウィスプは攻撃を回避！

▼ウィスプの行動！
　ホーリーライト！
　レーネに 417 のダメージ！
レーネのHPが 160 回復！
レーネのHPが 160 回復！
レーネのHPが 160 回復！
レーネのHPが 160 回復！


「あ、ちょっ、待っ、痛っ……」

▼ウィスプの連続行動！
　ホーリーライト！
　レーネに 417 のダメージ！
レーネのHPが 160 回復！
レーネのHPが 160 回復！
レーネのHPが 160 回復！
レーネのHPが 160 回復！

「痛い、ごめん、痛いからやめっ……」

▼ウィスプの連続行動！
　ホーリーライト！
　レーネに 417 のダメージ！
レーネのHPが 160 回復！
レーネのHPが 160 回復！
レーネのHPが 160 回復！
レーネのHPが 160 回復！

……なんでも、どこかの世界での最悪の拷問は、「傷を付けた後に治癒の呪文で回復させ、また傷を付け、永遠と傷を与え続ける事」らしい。
そんな事を考えながら、いつになってもホーリーライトが終わる気配がないので、レーネフィアは考えるのをやめた——。

ウィスプは勝利した！
ウィスプはレベルが上がった！



「……ひどい目にあったわ」

どことなく襤褸になりながら、城から離れていくらか歩く。
まさかいきなり自分のエンブリオと戦う羽目になるとは思わなかった。しかも敗北。
流石に肩を落とさざるを……

「……うん？」

どこからか、とても嗅ぎ慣れた匂いがする。
吸血鬼としての才能には恵まれなかったこの体だけど、その代わりか、『嗅ぎ取る』能力はとても優秀だ。
これは……同族の匂いだ。……ただ、他の匂いも混ざっている。というより、他の生き物に濃く吸血鬼の匂いが染み付いている、というのが正しいのだろう。
吸血鬼と関わりの深い何者か……血の匂いはそこまで濃くないし、ハンターの類でもなさそうだ。

「……ふむ。吸血鬼に無関係な人間よりは、友好的かもしれないわね」

ルリアンナが言っていた通り、今回の一揆では少人数による集団行動が推奨されている。
バラバラに動いて戦力分散の愚は犯せない。かといってこの混沌とした集まりでは統率された集団行動も取れない以上、これは最善の選択肢ではあろう。
ただ……

（……吸血鬼と組もうなんていう物好きは、流石に少ないでしょうからね）

寝込みを襲われて血を啜られるような体験は、まともな人間ならご遠慮するはずだ。
無論、そのような無作法で高貴でない襲い方をするつもりはないが……どちらにしろ、こちらに理解のある相手の方が好ましい。
……見えて来た。

（……龍人？）

濃い龍の匂い。あれらが吸血鬼と関わりを持つとは珍しいが……それもいい。
何が相手であれ受け止めるのが高貴たる度量だろう。
さて、まずは挨拶を……

「ちょっと、あなた？」




竜人——風斬東と言うらしい——との会話は終了。
彼を私の従者とする。
彼の返答を聞いていないが、まぁ多分大丈夫。な筈。

「……いい、聞きなさい？　風斬。つまり私は、虐げられる民の声を聞いて——、？」

——と。
よくよく今日は、同胞の香りを嗅ぐ日だ。
こちらは混じりっ気のない吸血鬼の気配……二人ほど、だろうか。

「数の上だけなら、これで揃うわね……よし、ついて来なさい、風斬？」

……今日は、悪くない日になりそうだ。

　少年は喪服のような昏い着物をはためかせ、にこやかな笑顔であなたの前に現れた。

　少年は女のように華奢な肢体をしているが、どうやらこれでも前衛を務めるつもりらしかった。