ラルフという方に腕前を認めてもらうため、戦うことになった。

結果としては何事もなく勝つことができたのだが、
あれだけの矢を受けても平然としているところを見ると、
やはり、いくらか力を抑えて戦っていたのだろう。


それから、私は本格的に城への突入を開始した。

まずは、城門を抜けた所にある庭園。
よく手入れもされていて、安心出来る場所だ。
話に聞くような暴君が住んでいる城の庭としては似つかわしくない
ように感じるのだが、腕のいい庭師の方でも雇っているのだろう。
これだけの広い庭を手入れするのは、大変そうだが。

お嬢様にそういう趣味があったら、
中庭が荒れ放題になったりはしなかったのだろうか。
今、その中庭はというと、何故かプールになってしまっているが。
「だって暑かったんだもん！」と、作った張本人である
イメトお嬢様は語っていた。

その言葉を発した直後、侍女長からバックブリーカーをキめられたが。
いつものことなので誰も気にしていない。

城に続く広い庭。翼を休めるメイドに堂々と声をかける男。

人懐こい笑みを浮かべて続ける。

ぽん、と手を叩く。どこかの怪しい商売人のように。
注意して聞けばいかにも喋り慣れた様子から得意の口上と判るだろう。

レフの服装をちらりと見やる。言外でメイド向き商品を匂わせているつもりらしい。

怪しい男が差し出し置いていったのは一枚のチラシ。

『女性に便利をお届けするキーン商会、会員様及び従業員募集中！』

裏には地図が記載されている。同じ平原エリアのようだ。暇なら覗いてみるのも一興……かもしれない。