今日は何を綴ろうか。
自分の事となると綴るような内容が何もないことに気づく。
日課と言えばだいたい決まっているしな。
先程までヴルの毛並みの手入れをしていた。
体が大きい分、労力がいる。
洗ってやるのも一苦労だ。
毎日飽きもせず蝶を追いかけてすぐに汚れて帰ってくる。
困ったものだ。

今では見慣れたものだが、ヴルを初めて見たときは驚いたものだ。
毛並みが赤い。
泥まみれで汚れていた時にも変わった毛色だとは思っていたが
洗ってやると改めてその色が鮮やかなものだったことを知る。
虎にしては随分と大きいし、なにやら角もある、翼らしきものもあった。
足や尾を見れば鱗のようなものまである。
あれはどの種類に属するものだろうか？
あまり動物には詳しくない私には知る術はないが、文献などを見れば
分かるものなのだろうか。
とにかく初めて見る獣だった。
しかしそれらを除けば、家畜などと変わりはない。
ひどく人懐こい獣の様に思う。
撫でてやれば気持ち良さそうに喉を鳴らす。
やはり猫科の何かなのだろうな。

そういえば、何時だったかヴルが蝶とじゃれている時に
あれがコロコロと転がっていて気づいたのだが。
あれは雌ではないのだろうか。
ふぐりが無かったのだ。
ということはヴルはやはり雌なのだろう。
そこで私はヴルにお前は雌かと聞いてみたのだが
ヴルは首を傾げるだけでよく分からなかった。
しかし恐らくは雌なのだろう。
ある時ヴルが私の首もとのこれに興味を示した。
ただのアスコットスカーフで、外では汗を拭うにも重宝していた。
お前も欲しいのか？と聞くと大きく吠えた。
ヴルには必要はないと思ったが、そこで私は思ったのだ。
雌ならば飾り立てたいものなのだろうと。
私は館の母の部屋から使い古したリボンを持ってきてやった。
今は亡き母の物だが、ただワードローブに眠らせておくよりは
使ってやるのがいいだろうと思ったし、何より女物だ。
ヴルも雌ならば女物が良いだろうと考えた。
それをヴルに見せてやると始めはその匂いを嗅いだ。
次に興味深そうにそれをウロウロと眺める。
なので私はそれをヴルの首元に巻いてやった。
首周りも太いためリボンは切ることも無く全て使い切った。
せめて可愛げがあるようにと喋々結びにもしてやった。
ヴルは最初、落ち着かない様子だったがそのうちに気にならなくなったようだ。
私に向かって小さく鳴いたので　お前にやろう　と言うと
ヴルは短く吠えてそのまままた蝶を追いかけていってしまった。
あの様子ではすぐ汚すものだと思っていたが
案外大事に扱っているようで、それから汚れて戻ってくることは
少なくなった様に思う。
眠っている生地はいくらでもあるのだがな。
しかし悪いことではなかろう。
いつまで続くか見ものだ。

一日の終わりに、ヴルを洗って毛を梳いてやる。
そして仕上げにあのリボンを巻きなおしてやるのが私の日課に増えた。

肩の上に陣取ったアズゥを撫でながらヴルを見た。