古い文明を持つ村の真ん中で、祭壇に寝かされた妊婦を大勢の村人が取り囲んでいる。

『ああ、神様！どうかこの子をお救いください…！』


『血の穢れた子なぞ、あやつだけで十分じゃ！』


『忌み子を殺せ！』

『妻に巣食う悪魔め！死んでしまえ！』『殺せ！』



村中を駆け巡る罵声、殺意、憎悪、恐怖。
異物。拒絶されるべき、異物。
村人らにとって外なるモノの血は異物でしかない。
そしてここに、異物がまた一つ。


「やめろよ！その子まだ何もしてないだろ！何でだよ！何で殺されなきゃいけないんだよ！」


『忌み子が来たぞ！』『仲間を助けに来たんだ！』

『儀式を急げ！早く息の根を止めるんだ！』

『サイネルもこの場で仕留めてしまえ！この人数ならやれるはずだ！』


異物に貸す耳などない。
村人らが、一斉に武器を構える。


「だから何でなんだよ！意味がわからないんだよ忌み子なんて！」

『よせ、サイネル！もう、止められないんだ…！』


叫びながら臨戦態勢を取ったサイネルを、父になってくれた人が制止する。
そうしている間に儀式は終わり、妊婦の夫が妻の腹の傍に立つ。



『この…悪魔め…！妻から離れろぉぉぉぉぉぉ！！』

「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ！！」



骨のナイフは、妊婦の子宮へと無慈悲に突き立てられた———











−？？−

古い文明を持つ村の一室。寝台には妊婦が寝かされており、その傍はに男がいた。

妊婦は境界を越えた禁断の愛を、その身に孕んでいた。

男は妊婦の妻になりたかった。
だが男は結局、妊婦の子の父にしかなれなかった。


男は妊婦に語りかける。


『本当に……産むんだな？———。』

『ええ。大事な大事な、私の子ですもの……うっ！』

『…！医者！———が！早く来てくれ！』






突如、世界が崩れ去る。

妊婦の腹を突き破り、赤子が姿を現す。
血だまりの中で妊婦は息絶えた。

村は炎に包まれる。
炎は村の全てを、”あの子”さえも燃やし尽くす。

炎の中で人々が踊り狂う。
焦がす熱に身を委ね、絶え間無く苦痛を唄う。

焼けて黒ずんだ少女は赤い花弁を赤子に向けてそっと放つと、灰となり、崩れ落ちた。

炎を背に、赤子がこちらへと語りかけてくる。






　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　オ　　レ












−？−

仮面の男が妊婦と対峙している。


仮面の男は妊婦の腹に矢を突き立てた。




妊婦の腹の中で、サイネルが死んでいた。

　開けた場所だから目についた。
　王城へ向かう途中、ポポロは大木に座り込む男に気がついた。遠目から見てもわかるほどの深傷を負っていることに興味が引かれたのか、警戒することなく男へ近づいていく。

　見るからに生死に関わる傷だというのに、座り込んでいてもわかる男の身の丈の高さに注目している。緊張感がないのか——いや、倫理観がないのだろう。
　ポポロはさらに近づくと膝を折り、男の目線と同じ高さでしゃべりかける。