王城の前にはたくさんの人たちが集まっていた。
これから試験をするらしい。

ラルフという筋肉隆々のおじさんに合格を貰えればこの一揆に加わることができるんだって。

僕は銘菓。
手も足もないけれど、とんだりはねたりはすることができる。
これを利用して、うまく道具を扱うんだ。

だけど……。

僕はちらりと持ち物を確認した。
そこには欠けた『印』がある。

僕たち『いのち』を生み出す会社、『らぐのー』のロゴマーク。
それは僕たちの誇りであると同時に、僕たちの身を守るものが封じられているんだ。

本来なら、そこから役立つ護身の道具が出てくるんだ。
そのいのちにとって扱いやすいものがね。

でも、僕ははぐれ。
持ち出したロゴマークは欠けてしまっていた。
これではきちんとした力は引き出せない。


試験は苦労することになってしまった。
いや、試験だけでなく、今後も苦労するだろう。
エンブリオの力が無ければ、僕は何もできなかったに違いない。

僕の欠片から出てきた道具は、とても大きな杖だった。
僕にとっては、ではあるけども。
それはとても扱いづらい。

威力だけはあるようだけれど。


試験に合格した僕は、森神さんとの待ち合わせ場所にやってきた。
そこには、彼女以外に二人の女の人が待っていた。

三人はいずれも互いの顔を知っているようだった。
僕だけが初顔。
だけど彼女らは他の世界に派遣されていた僕の同胞をよく知っているらしい。
同一のものではないとはいえ、大変喜んでくれた。


人型の種族は人間しかいない世界からやってきた僕にとって、三人の存在は新鮮だった。
人間ではないけれど、嗜好や思考、志向も人間と変わりないないらしい。
そのせいか、すぐに打ち解けることができた。


暫くは広庭を侵攻することに決まった。
王城近くなんだけど、どうやらもっとも手薄らしい。
なぜここではなく、山岳や森林に強力な部隊を配置しているんだろう？
不気味に思った僕たちは、広庭といえど深入りはせず、まずは地道に情報収集することにしたんだ。


一見、僕の目的とは何の関わりもない出会い。


僕はやがて知ることになる。
彼女らこそが僕の探していた答えを得るための鍵だということを。


そして気付くのだ。


『深淵』というたった二文字のために僕たちは出会い、

自分の存在の意味を知るために、


























いずれは互いに殺し合うことになる運命なのだと。

紫髪の男が、あなたに話しかけてきて、