わたしは、迷子。グリムとはまた会えた。かわいそうな『おとうと』にも、いつか会えるかしら。ごめんなさい。

　迷子は、わたしのほかにもいるらしい。おなじところから来た魂は、まだみつからない。あるのかもわからない。

ひそり、こっそり。ことこと、ことり。
あなた様を見つめている。壁の端から顔を出しては隠れている。
何かを言いたげに口をもごもごさせていると、あなた様が気付いていようといなかろうと、唐突に声をかける。

「……あの……どうも
　あなたもこの世界に呼ばれた人……でしょうか」

ただそれだけの事を云うだけ。だのにためてためて云うた言葉がそれである。

言葉に詰まる

ぐぅぅぅぅ

右目で、視る。
女の姿が、瞳に映る。

突如点灯した端末から鳴り響く、声。
言葉の主には返さずに、少年は女をじっと見つめて問うた。

　首を傾げた。特に何をするでもなくぼうっとしている時に、不意に視界に入ってきた一人の、その言葉の無いままの視線を受け止めているうちに耳に入った言葉に、眼を瞬いた。

　何と言って答えるべきか少し迷って、礼にも満たない一言を返す。その後にもう少しだけ悩んで、身体をそちらへと向けた。

　そっちは？　と短く問いかける。

　薄っぺらい微笑みと共に、呪術師は、女性の瞳を覗き込んだ。
　細めた瞼(まぶた)の向こう側、長い睫(まつげ)越し、灰色の、瞳。

　「——『これ』に触られてはいけない」。
　誰かが、彼女の耳元で囁いたような気がした。

通り雨だろうか。本当に唐突な雨で。ぱたぱたと髪についた雨を拭っていると、自分と同じ境遇だろうか。駆け込んでくる姿があった。

かけられた言葉にくすりと笑い、もう１枚無かったかと鞄を漁り、少し湿っっぽくなってしまっているタオルを差し出した

あまり大変と、思ってる様に見えなかったので問いかけてみる。とても不思議な女性だなと、感じた。