ラルフのおっさんとの手合わせを終えて、無事に参加を認められた俺達。
平原への攻城を控え、開始までの間は情報収集や他の参加者への挨拶まわりを行っていた。
見たところ本当に色々な世界からやってきた連中がこのメルンテーゼに集まっている…、近未来科学の栄える文明の世界や、数百年近く前の文明の世界、獣人たちの住まう世界、機械しか存在しない世界、ありとあらゆる世界から数多くの奴らが…この一揆への参加を決めている。これから始まる一揆は、想像していたものより結構派手な戦いになりそうな気がしてきた。
しかしメルンテーゼにはエンブリオの概念が存在している。王につく奴らもその力を使ってくることは余裕で想像がつくことだろう。
それに相手は数多くのネクターを所有している…、油断の許されない戦いがこれから長いこと続くことはまず避けられなさそうな気もする。
…とはいえ、今は俺が向かう予定である平原への攻城までは…出発まで長い時間を有している。それまでの間は元いた世界に一旦戻り、その時を待つことにした。
幸い元の世界とメルンテーゼは同じ時間が流れている。元の世界が朝の六時ならばメルンテーゼもまた朝の六時である為、メルンテーゼでの予定もあわせるのが容易である。

テーブルの上はゲーム機やソフト、幾つもの少年誌がえらく散漫していた。…散らかすんなら自分の家の部屋を散らかしてなさいと。
まぁこんな感じで、ルーディは昨晩泊めて以来この家にすっかり住み着いてしまったのだ。
当のこいつも帰るつもりはまったくもってなさそうである。こいつのことだ…、仮に外に放り出しても想像のつかない方法で部屋に入ってくるとかはまずやらかすはずである。
ちなみにこの時のこいつは俺の貸した白のワイシャツのみを身につけている状態で、その下はこれといって何も下着を身につけてはいない。

今日は家でカレーを作り、ルーディにも食べさせてみた。こいつ曰く外の世界の食事はその時が始めてのようである。
これまでルーディは急速な肉体成長の為に試験管の中で過ごしてきた為、外の世界の食物を口にしたことはない。与えられてきたものはほとんどが薬品なのだ。
初めて食べたカレーにルーディはえらく気に入ったようで、あらかじめこいつの頭ん中に入っているカレーの見た目や味に関するライブラリの内容とはまったく違うといっていた。
ぶち込まれてるデータと実際に食べるのとじゃ違うのも当然…、しかし味に凝っていることは事実である。
俺の場合は市販の固形のルーではなく、カレーパウダーを使ってルーを作る。使用する調味料のバランスによっても、味も結構変わるものだ。
何度か作っては改良をして、今の納得のいく味に仕上げているんだが…、まぁ…料理店の味にはまだ程遠いだろう。…実際に店で食べたことはないが。
それでもこいつは、俺の作るカレーの味をえらく気に入ってくれていた。
まぁ…、気に入ってくれているのは悪いことじゃないんだけどなっ。

うにゅーと俺に引っ付いているルーディ。ホントまあこうしてみると、実家にいる妹のようにもに見えるんだが。
…まぁ、あいつよりはまだマシだなぁ。こいつのほうが、妹よりは少し大人しい。
俺はとりあえずこいつの頭を撫でておく。…うん、なんか気持ちよさそうな顔をしてるな。
まぁ…少なくともこいつといると退屈しないというのも事実。正直言うと、ガチで嫌ならまず外に放り出してるくらいだ。…放り出しても、入ってくるかもしれないけどなっ。
これからの一揆も、こいつが一緒なら色々やっていけそうである。何せ俺に一揆でまともに敵と戦える程度の力は与えてくれているのだ。
こいつ自身もそれなりにスペックは高い…、アホの子ではあるが相棒としては本当によく出来た子であることに違いはない。
…とはいえ、こちらもパーティメンバー集めを真剣に考える必要がある。
敵は当然少数とは限らないし、出来るだけ複数人の仲間と手を組んで立ち向かわなければならない場面もこの先たくさんあるだろう。
まずはパーティを作らないと…、可能な限りの人数で。出来れば三人以上はほしいところだ。

とりあえず一発、こいつの頭にチョップを入れておいた。うん…、最後の部分が実に余計である。…まぁ確かにこいつがこの家に来る前から、結構ティッシュは消耗しているけれども。
悲しいことに、それが男よ。抑えられない欲求には、ただ自然と身体は動作してしまうものである。
…いかん、余計なことは考えないようにしないと。今のもまず読まれているやもしれん。
俺の考えてることを容易に読んでしまう相手がすぐ傍にいる…、そして今こうして同居している…、自家発電とかまず出来ない。
夜中にこっそりギャルゲー進めてても、絶対こいつは後ろから肩ポンするタイプだろうし。

ルーディの手は次第にソレに伸びていく…、すりすりと撫でながらもこいつは俺のほうをじっと見つめていた。
この先も協力するなら何でも礼をしてやるとルーディが言った後に俺はあの時、【それでもし俺が童貞卒業とか言ったらホントに叶えるつもりか？】と言葉を返した。
当のこいつはその後に【余計な金をかけねぇ意味ではそれもありか】と言っていたが、ちょっと待て！？ホントにするつもりじゃないだろうな！？

そう言うとルーディは、突然と近くのソファーへ俺の身体を押し倒した。
俺の上によいしょと跨れば、悪魔の笑みを見せながらこちらをじっと見つめている。

その時、俺は思わずルーディのシャツに手を伸ばしていた、その時の俺は、もう冷静も何もなかった。
ただこいつにはこれ以上言われたままというのが何となく嫌だった…、けどどうしてこんなことをしてしまったのかと改めて思う。
その時は確かに俺はこいつのシャツに手を伸ばせば、ボタンを解いてはシャツを肩まで脱がしていた。

ルーディはゆっくりと顔を近づけては俺の唇を奪う。これがこいつとの、二度目のキスになる。
一度ならず二度までも、俺はこいつに唇を奪われたのだ。
正直その後のことはまるで夢のような…、現実でなく夢であってほしいような…、…そんな感じの出来事だった。
結局俺はこいつの言葉どおりに、溜まったものをこいつの身で発散させていたのだ。
自家発電ではないそれは…、出来ることならまだもっと先まで取っておきたかったものでもある。本当に何故やっちまったんだと後悔したのは…、きっと後の話である。
当のこいつは満たされる喜びを味わっているかのような、そんな笑みを見せながら踊り続けている。
少しずつその激しさを増していけば、ルーディは抑えきれない声を漏らし始めていた。
お隣さんの部屋にこいつの声が聞こえてないかという心配もその時の俺はすっかり忘れて、何も考えることなくただ己が身に任せていた。
次第に込み上げてくる、覚えのあるその感覚に、やがてそれは勢い激しく弾け出す。
容赦なく溢れるその熱を、心地よく受け止めては満足そうな笑みを見せるルーディ。けれどこいつは未だ余裕を見せていた。

しかしこちらも熱はまだ収まりそうにはなく、結局それからもこいつの言うエキサイトは続けていた…。
気がつく頃には疲れて眠っていて、おきる頃にはもう翌朝である。
…そういえば、見たい深夜アニメを録画するの忘れてたなぁ。

人で賑わう箇所。
そんな場所で酷く挙動不審な動きをしていたかもしれない。
人に話しかけるでもなく、何か目的を持って動くわけでもなく。

そして。
正義に話しかけられればより一層、びくり、と体を強張らせた。
恐る恐る、といった様子でそちらへと向き直れば、——己の世界と何処か似たような雰囲気の衣服を、ちらり、とだけ目線を向け。
そして、長い髪に目を向けた後、ふるふる、と首を、横に、二度。
相手の言葉を聞いて、どこかがっかりするような。

頭を、深く下げる。
ジェスチャーでしかやりとりは出来ないため。
通じない、とわかっているが、その通じないことをわかってもらうためにあえて口を開いた。
あとは、じっと黙って、相手の反応を、待つだけ。

コートを翻し、決めポーズをとって。