———都会って怖いね。
　ホルタ・ルミナンスは故郷に居る母親に送る手紙の一文を頭の中で反芻しながら、羊皮紙にしたためた。今回の一揆の中心人物の一人、ラルフというとても大きな男ともやしっ子と呼ばれていた自分が模擬戦とはいえ戦ったということを書くと、母はどのような反応をするだろう。そう思い字を書く手を止め、ふっと母の顔を思い出す。
　大きくなったと喜んでくれるだろうか。　それとも、危ないから帰ってこいと心配してくれるだろうか。

　ホルタの故郷である村は人が住むには厳しい、そんな場所に有った。代わりに、特殊な鉱石が取れる。それ取る為に、エンブリオの力によって住めるようにしていたのだ。今回の王の独占にて、村はどんどんと荒れ果てていった。
そうして、一人、また一人と人がいなくなっていった。今や、残っているのは母と片手で数えられる程の人数だ。
　エンブリオさえ、あれば。また村は賑やかになる筈だ。

　書き終った手紙を、軽く折り畳み懐に仕舞った。まだ弱気を言う場面ではないはずだ。手紙は最後の最後まで取っておこう。

　ホルタは立ち上がり、荷物をまとめ飛び出していった。
　最初の一歩を堂々と踏みしめて。