私は血液である。
名前は特にない。
この名は私の種族を表すものだから、まあ好きに呼ぶといい。種族と言っても、私一人しかいないのだが。
私は一人であり、複数である。血とは流れ分たれるもの故、今ここに存在している私の他にも、どこかに別の私が存在するだろう。
中には自分こそが本体だと名乗る輩もいるだろうが、私こそが真の本体である。何故なら私は、私の始まりの日の記憶を持っているのだから。
まあそれも、ほとんど薄れているのだが。

話は変わるようで続くが、私は呪われている。これを呪いと表現するのは些か違和感を覚えるが、どんなに長い時を経ても一向に改善される気配がないので、私は私をこんな身にした輩に対して最大限の嫌みを込めて、“呪い”と呼ぶ事にしている。
先ほど、私の始まりの日の記憶について話したが、この呪いとはつまりそこから始まっている。敢えていうなら、私は働き蟻。私がただここに存在するだけで、奴に餌を貢いでいる事になる。まあその辺りはおいおい説明しよう。話が長くなると私が面倒だ。

今日の所はここで筆を置くとしよう。私にはまだ、時間があるのだから。