ハーピー達の集落。様々な彩りのハーピー達が歌い、空を駆ける。

「行ってしまうんですね。レイ」

魔法を使い、荷物を浮遊させて鞄に詰めている一人のハーピーに、
老いたハーピーが声をかける。

「えぇ・・・父が見た、集落の外の世界を、私も見てみたいんです。」

ハーピーは通常、女性しか存在しない。
しかしこの声をかけられている男性の腕は正にハーピーの腕そのものだった。

真っ白な髪に鋭い切れ長の金の瞳。腕を覆う翼もまた真っ白な彼の傍らには、
小さな天使型のエンブリオがついている。

「気をつけて。貴方のお父さんの居た世界は、
　ここのように穏やかな人ばかりではないから。」

「わかっています。ありがとう、行ってきます・・・長様。」

ばさりと腕を広げ、たくましく羽ばたけば、彼の身体は空を駆ける。







「ラルフ殿。どうか、よろしくご指導願います。」

様々な所を冒険したレイの耳に、世界の王が代替わりした話が届く。
ネクターを独占する独裁者。いろんな人々が集い、反旗を翻すという話を聞いた。

レイの父も、戦いの中に身を置いていたらしい。
反乱軍の募集に、彼の中の戦いの血が滾るのを感じた。

入隊して間もなく、腕試しの為にラルフという人間と戦うことになった。
礼儀正しく一礼すれば翼を広げ、羽から鎌状の曲刃を出すと、戦いが始まった。