——とてもとても長い間、泥のように眠っていた気がする

照りつける太陽の暑さで目が覚めた。

辺りは草原のようだけど、ここはどこだろう？

思い出そうとして、頭に鋭い痛みが走った

なにか　とても　大事なことを　忘れてる　気がする

そっと誰かの手が僕の頭に触れた途端、痛みが波のように引いていくのがわかった

何時から居たのだろう、少女が僕に手を伸ばしていた

痛みの収まった頭でゆっくりと思い出す

僕は「久瀬　胡太郎」で彼女は僕と契約したシェイドのエンブリオ、名前は——

「ありがとう、リル」

「——————」

どういたしまして、と言ってるんだろうなと何となく感じ取る。彼女が無口で無表情なのはいつものことだ

しかし、思い出せたのはそこまでだった

一般常識は問題なくおぼえていたが、なぜ僕が今ここに居るのか、今までどのように生きてきたのかが抜け落ちてしまっている

驚愕したものの、思い出せない物はしょうがない

とにかく此処にいてもどうしようもない、歩き出そうと一歩を踏み出し—

？

なんだろう、足に重みが足りない。何かが足りないんだ

周りにその「何か」がないか見回す

——あった

一目見た瞬間、はっきりとソレが足りなかったのだと身体が理解した

しっくりと手に馴染んだウッドフレームのライフル

スリングを肩に通して背負う。そのスムーズさに思わず苦笑する。頭は忘れても身体は覚えていたようだ

「いくよ、リル」

言葉も無く彼女は後をついてくる。さあ、あてのない旅へ出発だ

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ネクターの独占だって？

やっとたどりついた町でそんな馬鹿げた話を耳にした

冗談か何かの類だと思ったがどうやら新たな王とやらは本気らしい

エンブリオが居るからこそ今の生活があるのに、大反発を受けることも分からないのだろうか

それはさておき、僕もこの一揆に参加する事にした

どうせ当てのない旅だ。それなら人の集まる所に居た方が記憶の手がかりも見つかりやすいだろう

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そうして王城前に到着した

聞いたところによると此処が一揆の参戦受付らしく、実際僕以外にも何人もの人間や人間じゃない人や人型ですらない物が居た

リルと遊びながら待っているとようやく僕の番が回ってくる

ラルフという大男と戦って勝てと言われた。篩なのだろう。
それもそうだ、ちょっと戦っただけで戦闘不能になったら後方に下げるのにも手間がかかってしまう。

さて、どこまでやれますかね。