目を覚ますと、そこは夢の世界でした。


という訳ではなかったらしい。
つい数刻前に散々タックルを食らった痛みがその証拠だろうか。
うたた寝していたと思ったら見知らぬ場所にいたから、てっきり。

ここは異世界——メルンテーゼ 、というそうだ。
時を渡った唄はいくつか知っているけれど、まさか世界を渡ることができるなんて。
一度はただどこか知らない国に来ただけかとも思ったが、
歌えばふよふよと寄ってくる精霊達が、こちらで目を覚めて以来全く姿が見えない。
ということは、世界が違う、というのは本当なのだろう。
代わりに、エンブリオ、だったか。
そう呼ばれるらしい、光の球体が私に付き纏ってくる。
どうやらこちらでは、契約というものができるらしい。
その球体に押し切られるように契約してしまったが、
今後のことを考えれば損はしない筈だ。

……それにしても一揆、王への反乱だ。
この世界はまさに、革命が行われる真っ只中にある。
新たな歌が、詩が、物語が生まれようとしている。
それだけでも、巻き込まれた甲斐があるというものだ。
そのうえ、私以外にもあらゆる世界から人々が呼ばれているらしい。
ということは、今いるこの世界には、私の知らぬ歌が数多く溢れているということか。
それはなんて、幸せなことだろう。
そう考えるだけでも、いい夢が見れそうだ。

さて、そうと決まれば、新たな歌を探しに行こうか。
……その前に、一眠りするかな。