メイ市、魔術と学問の都にして異世界への扉を有するこの付近最大の都市である。　
雑貨屋の主人オルソンに一揆の話を聞いてからおよそ1週間後
ルイーズは後事を弟妹達に託して分割世界への交通の要衝となっているこの都市へ訪れていた。

ルイーズがこの都市に来るのは初めてではない。
数年前、里の付近に異世界から少女が落ちてくると言う事件があり
その折に、異世界へと渡れるこの都市まで送り届ける役目を担ったからだ。

当時は分割世界の事情なども知らず、少女を帰す為の方法を調べるのにもずいぶんと時間がかかった。
結局のところ、数ヶ月ほど里に滞在していたのも今では懐かしい思い出となっている。
別れ際に、異世界の技術で作られた保温機能のある水筒『魔法瓶』とやらを世話になった礼と記念として譲り受けたのだが
異世界ではありふれた品らしいがこの世界では高価な魔法の品でもない限り珍しく、重宝して今でも大事に使っている。
白湯を入れたり薬湯を入れたり、はたまた般若湯を入れたりと大活躍である。

以前のうろ覚えな記憶頼りに探していたが、見覚えのある尖塔と巨大なドーム状の屋根を有する建物を見つけ頬を緩ませた。
『王立魔道学院』魔術と学問を誇るこの街の中心施設の一つである。
お目当てはその建物の一角にある施設『異世界渡航管理室』…確かそんな名前だったはずだ。

異世界に渡るための手段はいくつかある
それはいわゆる機械技術だったり、場合によっては超能力などの異能だったり、あるいは魔術の力であったりする
ルイーズの住む里に落ちてきた少女の場合は、低レベルのトランス能力所持者であったが
能力を補助する機械のトラブルが原因で不安定化した霊的磁場の干渉を受け…文字通りこの世界に落ちてきたらしい。

要は世界ごとに得意分野があり、それぞれの方法で世界を行き来する方法があるわけだが
この世界では異世界に渡る手段と言えば魔術の領域と言う事になっているようだ。


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舞台裏