※続きものですので、先にブラック(ENo.1596)の日記を読むことをお勧めします。
http://ikki.x0.com/r/k/k1596.html#DIARY



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「そうだな。その辺りの事情についてはきっとお前の方が詳しいと思うから、
特に俺から補足する必要もないと思う。……他には？」

「…さあな、わっかんねー」

お手上げだ、と言うように首を振ると、ジャックはブラックの煙草を奪い取り
その煙を肺いっぱいに吸い込んだ。

「あ、おい…」
「今自分のやつきらしてンだよ。堅ぇ事言うなって」
「仕方ないな」

呆れた溜息をひとつ吐いて、「どこまで話したっけ」と首を傾げる。

「あ、そうだ。ええとな、もうひとつ考えられる大きな可能性としては、
『不正が容認される環境下にある』ってことだよ」
「……もうちょい分かりやすく言えよ」

難しい言葉使ってんじゃねぇ、とジャックがむくれ顔で唇を突き出す。
ブラックは仕方ないとばかりに肩を竦め、話を先に進めた。

「犯罪を犯せば普通は捕まるだろ？それがないってこと」
「…あ？」
「…要するに、イカサマをしてもその罪を咎められない土壌——
つまりは警察だとか裁判官、あるいはそれらを動かす権利を有するもの。
その法の執行者と癒着している可能性があるってことさ。
だから極端な話、その場で人を殺したって罪に問われないかもしれない。やりたい放題ってことだな。」
「ははぁ…なるほど」

ヤツらがやりそうな事だぜ、とジャックは思案する。
結局のところ、権力と金は切っても切れない関係で、
金さえあればこの世にどうにもならない事などないのだ。

「…で？名推理は結構だけどよ、お前はそれでどーすんだ」

問いかけに対し、ブラックは「決まってるだろ」と返し、
当然といった風に言葉を続けた。





「黒幕をぶっ潰す」





その言葉にジャックは一瞬絶句し、次の瞬間には呆れたように一度天を仰いだ。
そうしてやれやれとばかりに肩を竦めた。

「おま……お前なぁ…マフィアやら権力者やら、裏のめんどくせぇ連中相手に喧嘩する気か？」
「俺は怒ってるんだよ、ジャック。俺達の戦績に傷をつけられたことにさ。
どんな理由があるのかなんてどうだっていい。知ったこっちゃないね。
……でも、気に入らないから、潰す」

そう言って唇を不敵に歪めて笑う様はまさに『悪い顔』で。
ああ、そういえばコイツを怒らせると怖いんだったな、と思い返す。

「それにさ、俺達、最近はずっと大人しかったじゃないか。
お前もそろそろ暴れたいだろ？」

その言葉を聞いた瞬間、ピクリとジャックの眉が動いた。
そうして段々と口元は弧を描き、白い歯を覗かせてにんまりとした笑みを作った。

「いいぜぇえ？俺もな、ちょーーーーど暴れたかったトコなんだよ。
俺たちの無敗伝説にきったねぇ泥塗ったヤツらに借り返さねぇといけねぇしよお」

バキバキと拳を鳴らし、怒りを顕わにした笑みを浮かべてジャックは拳に込める力を強めた。
おーこわ、と軽口を言いながらブラックはくすくすと小さく笑い声を上げる。

「ジャッキーちゃん、これ以上部屋壊さないでくれよ？」
「あぁ？ンな事ぁ言われなくても分かってるっつーの」
「今まで散々壊したくせに」
「俺を怒らせたあいつらが悪ィんだよ」

二人顔を見合わせて、ニィっと笑う。
誰が見ても確実にそれを『悪い顔』だと言うだろう。
そんな表情を浮かべているのに、ブラックもジャックも、実に楽しげだった。

「ヘイ、やってやろうぜ相棒。そりゃあもう、ド派手にな」
「分かってるって、相棒。お前の気が済むまで暴れまくってくれよ」





「「目にもの見せてやるぜ！！」」





鬨の声とでも言わんばかりに、部屋には大きく手を打ち鳴らす音が響き渡った。