"たかが1人の力でどうにかするには、世界は大きすぎる。"
「世界は私1人で滅ぼせるほど小さくはない。」

"だが、ほんの少しだけ軸を乱してやれば、世界はその自重で勝手に崩壊する。"
「でもね、重要な場所をちょっとだけ乱せば、あとは勝手に終わりに向かっていくの。」

"人間も世界も、等しく脆い存在だ。"
「世界も人間も、等しく脆い存在なんだよ。」

「ねぇ、──私。」

------------------------------day 2------------------------------

邪神様の召喚に成功（？）した私は、王城前へとやってきた。
近くまで来てみると、思ったより大きく見える。さすがは王城といったところか。

さてこれからどうするかと考えながら、城を見上げていると、突然赤髪の女が話しかけてきた。

「初めまして、私はルリアンナ。この一揆を影で……」

「は？」

「えっ……あの……」

私としたことが接近されるまで気づかないとは、急いでステータスを高めないと危ないかもしれない。
そして、久々に人に話しかけられたものだからつい酷い対応をしてしまった。コミュ障か。

赤髪の女(ルリアンナというらしい)の話を聞くと、そこにいるゴツい男（ラルフというらしい）と腕試しをして、
実力を示せればこの世界で重要なリソースであるネクターをもらえるらしい。
今現在の私の性能を知っておきたいし、ネクターも必要そうだし、何より体が混沌を求めている。
私にとっては一石三鳥な話のようだ。

「へぇ、面白そうですね。是非お願いします。」

獰猛な笑みを隠しながら、私はこの世界に降り立って初めての戦闘を開始した。


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「ふぅ、まぁまぁ馴染んできたかなぁ。」

ゴツい男との腕試しを終えた私は、受け取った少量のネクターを手の上で遊ばせながら付近をふらついていた。
邪神様の力をお借りして適当に殴ってるだけで、私の力を認めてくれたので、寸止めされた気分だ。物足りない。
もっと混沌を満たしたい、満たされたい。そう思いながら付近の散策を続ける。

しばらく歩いていると、前方に4人（？）組を発見した。
何やらあいつらは愉快そうだと私のセンサーが告げている。
これは要観察だと判断し、近くの茂みに身を隠して様子を伺う。

4人のうち1人は何やら偉そうな服を着て偉そうな喋りをしている。
あれがあの集団のリーダーだろうか。ここからではよく聞き取れないが、法がどうとか言ってるようだ。
法とはまた……混沌を是とする私とは正反対すぎる存在みたいだ。
でも、何だろう。不思議と私と近い波長を感じる気がする……。

1人は一瞬普通の人間かと思ったが、ツノやしっぽが生えている。
どういう種族だかはよくわからないが、立ち振る舞いは人間のそれに近いようだ。
偉そうな奴を若干慕っている……？ように見える。

1人（と呼んでいいかわからないが）は植物と少女を足して2で割ったような風貌だ。しかも大きい。
いろいろな世界を渡ってきたが、このような生物はあまり見た記憶がない。
とても興味深い。

そしてもう1人はその植物少女のツタに巻き取られて空中で揺れていた。
一番普通の人間っぽい。うん。よわそう。

少し観察しただけでわかったが、私が手を下すまでもなく、素で混沌とした集団のようだ。
個々が興味深い要素を持っていて、飽きることも飢えることもなさそうだ。
あの中にいれば、この世界での活動もしやすいだろう。
利用させてもらうことを念頭に、もう少し詳しく観察してみよう。

邪神様に偵察してきてもらうことにする。
私より大分小さいし、きっと、多分、偵察に向いているだろう。多分。

邪神様が茂みから出て集団のほうへと向かっていく。
……太鼓を鳴らしながら。

問題ある。
時既に遅く、4人組は私と邪神様のほうを訝しげに見ていた。

もはや観察どころではなくなったので、声をかけるために茂みから出て集団のほうへと歩みだす。
まぁいい、精々私の目的のために利用されてくれ──。