城門から王城へと続く道。
その、これ以上無いと言うほど、城門に近い場所。

数多もの「参加者」に大きく遅れを取り、
金色と桃色の少女の2人は、寛いでいた。

桃色の少女の体内には、造り物のような少女が沈み、
呆けた表情のまま、指先や、爪先が、溶け出している頃合い。

一方、金髪の少女は、眠たげ表情で。
けれど、興味深そうな視線で、桃色の体内を見詰める。

金色は、昨日と変わらず岩に腰掛け、
桃色は、地面に割座で座り込み、無機質な少女を呑み込んでいる。

気怠げな雰囲気で、まったりと会話をする2人。
その狭間で、また、1つの命が消えようとしていた。

生命を絶たれようとしている、造り物の、人形のような少女。
彼女は、この世界で「エンブリオ」と呼ばれる生命体の一種。

金色と桃色の2人は、「一揆」が始まってから、ずっと、
この「エンブリオ」達に触れてばかり。

とは言え、他人の目がないことは、彼女達にとっては……
少なくとも、桃色にとっては、とても喜ばしいことだった。

現在の彼女は、体内を通して風景が見えるほどに透け、明らかに異形。
彼女が他の生命体と「仲良く」なるには、若干の障害となりそうな風体。

他人の目があると、彼女は、碌に“捕食”することもままならないのだ。
そう、他人の目が……

ふらり、と現れた白い髪の少女は、2人の様子に物怖じすることなく、近付き、
桃色の正面の金色より近い距離で、ちょこんと、中腰の体勢で座り込む。

時折、ぬいぐるみに話しかけては、反応を待つ素振りを見せているが、
彼女以外には、何を言っているかどころか、声すら聞こえてはいない。

けれど、恐らくそろ白髪の彼女には、クマのぬいぐるみと“会話”できているのだろう。
コロコロと表情を変え、クスクスと微笑み、傍目にも楽しげな……恐らく、セツナという名の少女。

じろじろ。

じろじろじろじろ。

先刻まで、白い髪に黒い衣装を着た少女が居た場所……よりも少し近く。
そこには、別の……同じく白い髪だが、赤と白を基調にした服を着た別の少女の姿。

桃色が身体をどくん、と脈動させると、体内に沈んでいた少女が、完全に姿を消す。
溜息を吐きつつ、「もう見世物は終わりだよ」とでも言うかのように。
そこには、人形のような少女への感情など、一片もない。

同意するかのように、こくこくと頷くクマのぬいぐるみ。
物言わぬ彼？　彼女？　も、自意識はしっかりあったりするのだろうか。

先日と同じように、足下に擦り寄ってくる桃色の少女に、頭を撫でて応じる金色。
この2人の中では、こういったスキンシップが日常なのだろう。

4人の少女の語らいは、まだまだ続く。

その日は、陽が落ちても、彼女達の声は途切れることなく、
そして次の朝も、楽しげに騒ぐ4人の少女を、誰かが見たとか見てないとか。