試験をやっていた強そうな人(ラルフさんと言うらしい)との手合わせは、4合ほどで終わった。
どうやら認めてもらえたようだけど、随分と手加減もされていたみたいだ。
こっちは全力でかかったのに、息も切らしていない…いや、最初から息は切れていたけどそれが変わっていない。

ラルフさんと麦藁帽子の女の子(こっちはルリアンナさんだそうだ)は、
僕にネクターを一握り渡すと他の参加者の相手をするために足早に人ごみへ消えていった。

後で聞いたところによると、4桁はいそうなあの人ごみはほとんどが当日に集まった人だったらしい。
それを全部一人で試験していったとか…剛拳のラルフ恐るべし、世の中は広いや。

ひとまず一揆のメンバーとしては正式に参戦できたみたいなので、今度は仲間を探すことにする。
僕は飛び道具が主体だから、距離を取れない状況だとガスティの手伝いがあっても不利。
集団同士のぶつかり合いになるだろうから、そのへんをフォローし合える仲間が必要になってくる。

さてどうやって探したらいいのか、と参加者の間をぶらぶらしていると、仲間募集の声がそこかしこで聞こえてくる。
少し様子を見ていると大体4人までぐらいの範囲で、参加者同士が自主的に部隊を組んでいるみたいだ。
具体的な仲間の希望もないし、呼びかけを聞いてみて僕が入れそうなところに入れてもらうことにした。

で、最終的に集まったのはと言うと…手の平サイズの妖精さん、尻尾が生えた獣人らしい子供。
そして僕の倍近い大きさがありそうな鉄の…鎧？みたいな人。どうも精霊の類らしい。
…別の分割世界からの助っ人がたくさん来てるにしても、ちょっと人材が多彩すぎやしないかな、うん。

ともあれ、参戦の準備は整った…いよいよだ。

リンは一生懸命、猛禽類のようなエンブリオをおいかけまわしはじめた。どうやら背中に乗りたいみたい。ちょこまかと走り回る。

いっしょになって、リンの契約エンブリオの小さな天使のような少女も楽しそうにリンを追いかける。

ぴこんっと尻尾が立った。きょとんっと目を瞬かせ、少ししてえへへー、と笑顔になる。その動きに合わせて、鳥の形をした影もなにやら動いていた。

りゅーが影を見上げ、首を傾げた。影がりゅーを見下ろし、首を傾げた。
——ふと、鳥形の影は「まるでガスティを映したような」形になる。
これでいいのかな、と言う風にりゅーに向かって首をかしげ…

そう告げて、ショックを受けた様子の影の鳥からトビアスに目を戻した。影色の瞳が人懐っこく笑っ
……瞬き一つ。
ラベンダー色の瞳が人懐っこく笑っている。

相手の姿を認めれば、片方の手は武器を取り出し、もう片方の手でサングラスの位置を調整し始める