ホームステイ初日の夜。

　弟たちに挨拶を済ませ、歓迎会を簡単に開いた後、私とアズちゃんはアズちゃんの部屋にいた。
　せっかく女同士ということで、お部屋でお話してみようか、という感じ。
　来たときは数日用ぐらいのカートしか持ってきてなかったのに、小さいテーブルやらその上にある
ずらりと並んだ基礎化粧品類はどっから出てきたの！？
　不思議そうにしていると、アズちゃんが理由を教えてくれた。
　原理はわかんないけど、アズちゃんのポシェットが実家の倉庫につながっているんだとか。
　うーん。異次元の世界から来てる人はよくわからない。


　お風呂上がりの私たちはパジャマスタイル。
　アズちゃんは案外スタンダードなシンプルなパジャマなんだなーと思ったら、男兄弟対策らしい。
　確かに家族じゃない男子に見られても平気なパジャマってなるとこうなるか。

　本当にふつーの女子トーク（何が好きだ〜とかそういうのね）をしてたら、アズちゃんが私をじっと見ていた。
　目ではなくて、どこを見てるのかわからない。

　？？？何？？？

「萌さん。あの・・・」
　アズちゃんが決意したように話し出した。
「ん？なぁに？アズちゃん？」


　穴開く。そんな見つめられると穴開くよ！？


　がっ！とつめよられ、


「肌、超綺麗なんですけどっ！何使ってるんですかっ！？」

「え？」



　きらきらきら。
　そんな感じの音がアズちゃんの瞳からしている。
　そういえば、風呂（温泉）入るときに効能とか聞いてたな。
　そういうトーク好きなの？？

「ん〜〜っと。普通の洗顔とへちま水と乳液かな？？ＵＶ対策は気を遣ってるけど」
　ほんと、そんだけ。
　シミソバカスだけは気をつけないといけないと、母さんとばあちゃんに言われて、小さい頃から徹底してる。


「それだけ？食事とかは！？」
　きらきらきら。
　
　おおう。まだ詰め寄る！？
　眩しい。ヘアバンドつけたアイドル眩しいです。


「や、野菜ジュース、かな？トマトとかにんじんとか季節に合ったものを飲んでるけど？？」
　ハウス栽培のもだけど。
　うちの野菜は自慢じゃないけど美味しい。蜂蜜入れたら完璧である。


「それだっ！」
「！？」

　声でか！
「あ、でも家族全員飲んでるけど？」
「あときっと温泉の効能で美肌なんですね！！」

　なんか言ってる。
　ひとりで言ってるよ。この子。

　
　と思ったら、

「触っていいですか？」
「ひええぇええ！？」

　許可とるまえに触ってるってば！？

　あーもう、好きにして。
　
　
　学校で友達の肌やら胸やらセクハラする方だっただけに、なんか慣れないけどもっ。
　結構しっかりした指してるのね。アズちゃん。　


「うーわーもちもちしてる〜。すごい〜」

「なんか、容赦なしでもちもち触ってるね」
　苦笑してしまう。

「えー？だってー。もったいないですよ？」
「何が？」
　首をかしげる。
　肌が伸びることとか？？


「こんなに綺麗な髪で、こんなに綺麗な肌なのに、ＵＶカットしかしていないとかっ」
「え？」

　正直肌に関しては、農家の娘にしては白いかな〜ぐらいしか思ってなかったから予想外すぎた。


「たとえば〜」
　今度は髪の毛を触られる。お風呂上がりだからおろしてる髪の毛を。
「巻いて、横から流すとか〜〜」
　指でくりんくりんと巻かれて、左肩から流された。
　いつも一つ結びにして後ろにふんじばってるだけだもんねー。
「へー。面白いね」
　鏡で見るとなんか面白い。
「あとはビューラーとかしてー」
「え？」

　目を瞑ってと言われるまま、まつげを挟まれてしまった。
「はい、できた〜」　
「お？」
　マスカラつけてなくても結構顔変わるもんだなー。
「萌さん、明日の朝ちょっといろいろいじっていいですか？？」
「早いよ？？」
　超早朝だよ！？
「大丈夫！１０分ぐらいでできますから！」
　そんな短時間でできるもんなの？？
　へー。

　メイクとか興味もったことほとんどないからよくわかんないけど。
　母さんもほとんどすっぴんみたいなもんだし。
　そんなもんなのか。
　学校も農業系の学校だったから、メイクしたら実習中で落ちちゃったから、他の子も眉毛ぐらいしか
いじれなかったもんなー。



　翌日。
　ものすごい神業でアズちゃんがイメチェンメイクを施してくれて、家族を驚かせてくれたのでした。
　TVカメラにもちらちら撮られちゃったよ。
　ぎゃー。
　これじゃ、今後も毎日メイクせにゃならん！？
　アズちゃん、狙ってた？
　お茶目に笑ってるけどこの策士がががが！！


　さすがに髪の毛は自分で巻くのが大変なので、昼から美容院いきましたとも。
　美容道大変。
　しばらくアズちゃん師匠にお世話になります。母さんと。


　あ、仕返しとしてアズちゃんの胸はお風呂で夜に揉んでおきました。
　


　

エリカがアニマの顔面をバチンと叩いた