城門で大きい人と腕試しをしてから１日。
森の奥へ尋ねて来たのは先日の呪術師——そう、初対面で鼻から吸うタイプの
媚薬を３つと言った不思議な人——と、青い髪と翡翠色の瞳をした、青年。
友達なのかとソルトに尋ねれば

「……ねぇ、「ルド』？　僕達、『お友達』って事で、いいかな？」
「良いんじゃないか、別に、それでまずい事も無いだろ？
依頼人と雇われってだけじゃなんか無機質だし。」

小さく首を傾げて話し合う二人。更に自分も首を傾げて加わる。
名乗り忘れてた名と共に。三人で首を傾げる、不思議な光景。

「…ソルトさんにもまだ名乗ってませんでしたよね
クローシェと申します。ソルトさんとは…何でしょう？」
「……なら、クローシェも、僕と『友達』になってくれる？」

『友達』という引き籠りには縁のない言葉に、胸が躍る。嬉しい、言葉だ。これは。

「……ディアリアドさんも、よければ『友達』になって頂けますか？」
「……ああ、俺の事も、名前長いだろ、ルドでいいよ。よろしくなクローシェ」

愛称で呼んでいいという言葉を返事と受け取る。
初めての感覚だ。友達。引き籠りの、
人との接し方等ろくに分からない私に、
二人も出来るなんて。嬉しい。とても、嬉しい。

お代を受け取りながら、一揆の話をされる。
二人も参加するのだろうかと思い、
ひとまず家——というか勝手に臨時住処にした小屋に案内する。
ハーブティーを差し出しながら、聞けば二人ともこの世界に招かれた人だという。
きちんと理由があって戦う二人を、凄いと思った。
「私なんて住む場所と手段を追われると
隠居生活出来ないからって言う理由ですのに」
頬に手を当て、呟くのはニート引き籠り宣言。
理由なんて常に単純だ。
自分の生活は大事。エンブリオが溜息をついた様な
気がするけれど気にしない。
そしてそこで、ソルトさんからの、言葉。

「……ねぇ、『クロ』？ 良かったら、僕達と一緒に来ないかい？
僕はルドに守ってもらえるけど、ルドの怪我は、
僕じゃ治せないんだ。君の腕を、貸して欲しい」

びっくりした。自分の事を必要として貰えるなんて。
堂々と引き籠りニート万歳宣言をした直後だと言うのに。
それでも、必要とされる事はいやでは無いのは、人間の性か。
頷き、それを承諾した私に、二人の視線が向く。

「仲間は多い方が良いしな。改めてよろしく、クローシェ。
名のある魔女が一緒なら、心強い」
「……決まりだね。クロも、ルドも、改めて、宜しく。」

決して名があるとは思わないけれど出来る事があるならば応えようと、思う。

「……それじゃ、まずは、歓迎会がてら、ピクニックにでも行こうか？」

お弁当は何を作ればいいだろうか。
一揆に参加する。と言った矢先。面倒くさい事は考えたくは無いので
目先の楽しい事へと、直ぐに思考はシフトした。エンブリオの溜息は、聞こえない。

ふふ、と嬉しげに笑いながら歩く。

エンジョイする気満々である。

少年は、薄っぺらい微笑みを、顔に貼り付けたまま

手招くように、片手を掲げた。