——吹き荒ぶ風雪と黒空に描かれる空紋を懐かしむ。


この世界へと移ってから、今日で何日目だろうか。
あのラルフとかいう男と戦ってみたところ、恐らく戦闘能力には問題は無い。
エンブリオと呼ばれる精霊らしきものを取り込んだニグラシアの様子も
さして変わりが無いように見える。
俺へのフィードバックがどうなるかは興味深い。
時間を見つけてレイやイリーシャ辺りに話を聞いてみれば面白い見解が聞けるかもしれん。

戦いが終わって少ししてからだったか、
誰かに呼ばれた気がして、つい気軽に返事をしてしまったがどうやらエンブリオだったらしい。
シェイドと呼ばれるソイツはどうやら俺の鈴が気に入ったらしく
契約が完了するや否やするりと髪に溶け込んでいった。
・・・物好きなやつだと笑ってしまったのが不服なのか、幾らか呼びかけたが悉く無視をされたので、
『ジェテス』という名はどうだと提案してみたところ、漸く機嫌が直ったらしい。
まるで面倒くさい女のようだという感想は、さすがに漏らす訳にはいかなかった。
エンブリオがこれで二体。この先も増えていく事になるのか・・・果たして。


元居た世界も此方の世界も、昼は明るく夜は暗く。
当たり前であることを、当たり前であると受け入れる。
疑問を抱く事がおかしいとでも言うように。

昼は明るく夜は暗く。
太陽は見えず、月もまた見えず。