−ギル＆シュリ−



「シュリザさん、また、泣いてるんですか？」
「だって…っ…だって、また…っ　また　ギルくんが、動物を…撃った…っ！」
「…貴女は仮にも猟犬でしょ？そして僕は猟師です。動物を撃つのは、僕の仕事ですから。」
「でも、でも…っ」




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獲物に向けて引き金を引く時
僕は心に決めていることがある


それは『迷わない』ことだ


迷ったら『心』の部分を撃てない
生半可な気持ちで撃てば
余計な痛み・苦しみを獲物に与えるだけ


そう僕は考えてる



だけど僕が動物を撃つ度に
シュリザは泣く


大きな常磐の瞳に
大粒の涙をいっぱい浮かべて
人の目も気にせずに泣く


「そうやって…いつか、っ…マハちゃんや、カネちゃんや…っ
チェリオくんやっ…ブチくんも…撃つ…の？」


白地のハンカチをシュリザの目元にあててやりながら
僕は答える

ハンカチを抜けて
こぼれ落ちる涙が
僕の右手を濡らしていく


生ぬるい





「ああ。だって、彼らは『獲物』だよ？」



ふとこんな言葉をいとも簡単に吐ける僕こそ
デビルの化身なんではないかと思う
そして慈悲深い涙を浮かべて他人を思いやれるシュリザこそ
本当の人間じゃないかなって思う




「シュリザさん…僕からいつ離れてもいいんですよ。」

「だって僕といたら、貴女は泣くことしか覚えないから。」






————本当は知ってるんだ

　　　　———こんな言葉を吐いても




「…その時は…シュリザが貴方を噛みコロスから…っ」




あの常磐色の瞳が
見たこともない妖しい光を放って
僕に言い放つ最大の優しさ





「…できもしないこと、言わないでくださいよ。」





やがて遠くから僕らを呼ぶ明るい声
たぶんチェリオさんだろう



「さ、シュリザさん、行きましょう。」
「まって、お花を置くから。」
「いやいや、勝手に僕の獲物を土に埋めないでください。」
「お墓だもん」
「いや、毛を剥ぎます」
「だめ！ギルくんはほんとにメッ！な子ね！」
「…肉も食べれますよ？」
「…（！）…う、だ、だめ！！」
「…ちょっと今食べたいとか思いましたね。」
「思ってない！」
「…」




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