とある研究所
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

「本当に"万已楽"をメルンテーゼに送り込んでも良かったのか？
　あいつはメリアルール型とは言え"MeriaLevin"を保有している。危険ではないか？」

「ええ、問題ありません。ここから別の世界に渡ることは禁じられていますが、今回だけは特例です」

「…星喰い"Meria"の侵食を防ぐための世界移動の禁止だったな。特例とは？」

「以前、魔王と呼ばれる存在がこの世界に迷い込んだらしいですね？そして空間を切り裂いて別の世界へ逃走した、と」

「そんなこともあったな、しかしそれは"終わった話"だろう？あの時の空間の歪みはもうプロトらが修復したはずだ」

「その通りです、たしかに修復は完了しました。
　世界の向こう側のほうは迅速に修復をしてくれたみたいですが、こちら側は少々時間がかかりましたね」

「星喰い共が空間の歪みを修復されまいと必死だったからな。…繋がっていない歪みなど何の役にも立たないというのに」

「ええ、少なくとも通常の肉体を持つものとってはそうでしょうね。」

「星喰いにとっては違うと？」

「それは…わかりません。しかし歪みを修復する前に少数の星喰いが歪みに入り何処かへ流れていったそうです」

「そんなもの、放っておけば自然に消滅するだろう？あの空間には生物も居ないだろうしな」

「ええ、ほとんどは消滅したかと思われます。
　しかし星喰いの一部でも別の世界にたどり着けば、奴らはそこから増殖をし、他の世界も喰らうことでしょう」

「つまり特例というのは他の世界に"Meria"が居る可能性がある　ということか」

「その通りです。それに今回のメルンテーゼの救援要請
　新しい王がネクターと呼ばれるエンブリオ…精霊との契約に必要な植物を集めているそうですね」

「それが今回の件に関係あると判断したのか？」

「ネクターはその性質からきっと多くのマナを蓄えている植物でしょう
　そして星喰いが力を取り戻すには多くのマナが必要です」

「その新王側に星喰いが紛れ込んだ可能性があるとでも？」

「…わかりません。しかし可能性がないこともないでしょう
　この世界にまでこの情報が届いたということは、相当な事態なのでしょうし」

「星喰いの存在を確かめるのも兼ねて、というわけか
　それならプロトなど安全な機体に向かわせても良かったのではないか？」

「いいえ、メリアルール型でないといけないのです
　"万已楽"が星喰いを倒せば星喰いはメリア鉱石へと結晶化します
　しかしメリア鉱石をメリアルール型以外が運ぼうとすると何者であろうと衰弱していきます」

「だから"万已楽"が都合が良かったのか」

「ええ、例え星喰いが居なかったとしてもエンブリオが"万已楽"の力となりますし
　他の世界の情報も得られることでしょう」

「上手くやってくれるといいんだがな……」



メルンテーゼにて
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

どうやらあなたに生えている魚の尻尾に、とても興味を抱いているようです。

そう叫んだ少女は、ふよふよ漂っていた万已楽に勢いよく抱き付いた

城壁近くで万已楽を呼び止めた少女はその目を好奇心に輝かせながら問いかけた。