んー……。
折角だからサラについてでも話しておこうかと思ったが、正直何を話していいのかよくわからんな。
こういうのはあれかい？てきとーに外見情報あたりから語り始めて、凄惨な過去とかちょっといい話とかをでっちあげつつ上手いことお涙頂戴にもっていくのがいいのかね。ちげーか。そうか。
つってもマジでなに話していいのかわかんねぇんだよな。俺にとってこいつはクラウディオの娘で、今はもう無くなった部隊の新人ちゃんで、残念なくらい頭の悪い世間知らずな小娘って程度のもんだからなぁ。
あ、でもこいつの母親はマジで美人だったぜ。5年くらい前に死んだけど、器量も良くてセクシーな身体しててもう本当に申し分のない女だったんだよな。そーいやあいつ、妹がいるっつってなかったっけか。妹。探し出して頼み込んだらヤらせてくれねーかな。
あ、でももう結構な歳になってるか。じゃあいいや。

…………。


えー……話が逸れたな。なんだっけ。サラの話か。話すことがねぇって話してたんだっけ？
まぁ正直、こいつのおむつを替えさせられた話とかそういうどうでもいい話したって面白かねぇだろうしな。かと言ってこんなとこであいつのスリーサイズやらなんやら語ったところでどうにもならんし。もうちょっとこう、うーん……。
そうだ。
サラがファザコンで困った話でもするか。
そう、実はあいつファザコンなんだよ。それも尻を追いかけるタイプの。　ん、尻？　背中か？　まぁどっちでもいいな。
とにかくあいつは結構なパパ大好きっ子だったのさ。本人は自覚しちゃあいないだろうし周りからみても一見した限りじゃ大したこと無い感じなんだがね。大好きなパパが傭兵稼業でなかなか里に戻らないからって自分も傭兵になる頭の悪さで察してくれよ。傭兵だぜ？　気ぃ抜いたら死ぬ職業だぜ？　なんで傭兵なんだって聞いたらパパがいるからとか言い出すんだぜ？　頭おかしいんじゃないの？
でだ、大層なファザコンっぷりを発揮してパパと同じ部隊に入隊したサラちゃんなわけだが、そこで困るのは俺なんだよな。俺にもいろいろな都合があるんだ。
隊の士気に関わるし隊長のフットワーク重くされてもきつい、それに隊長が情にほだされて判断ミスなんてやらかした日にゃぁもう笑えたもんじゃない。　だからなんだかんだで押さえるとこは押さえて上手いことやる必要がある。
正直苦労したね。家族の団欒を邪魔する意地悪オヤジみたいで気が乗らないことこの上なかったが、それでもどうにかこうにかちくちくと地道な努力で二人の仲を引き裂いていったのさ。……って改めて言葉にすると酷いな俺、泣ける。
まぁでもその甲斐もあってかあいつもちゃんと視野が広がって、入隊してから1年たったころにはファザコンも改善されてきたんじゃねーのってくらいにはなってたんだよな。いやーマジであれは頑張ったよ俺。

ところがだ。
戦争が激化して負けが濃厚になって、そんであの悪夢のような特攻作戦。
肝心のそのパパがその作戦で死んじまったからさぁ大変。もとから頭のおかしなファザコンだったサラは、ここにきて本当に頭がおかしくなっちまった。
いや、ほんと勘弁して欲しいぜ。あいつ自分の頭の中で勝手に俺を『パパの代わり』にしやがったんだ。今じゃ俺のことを本気でパパだと思いこんで、ひよこよろしく俺の後ろを付いてくるってわけさ。
どうにもならんだろ？　いらないところでファザコン極めようとしてんじゃねーよ。困るってどころの話じゃ済まねぇ。これでサラが親友の娘じゃなければ構わずそこらに投げ捨ててるとこだが、残念なことにそういうわけにもいかねぇしな。
で、まぁ……

えー……
あ——……

もう話すことがねぇ。

やめだやめ。あいつの話はやめにしようぜ。他の話だ、えーとそうだなぁ……