linnut lause -1-


山の奥の奥の奥。
迷い込んだ、男が一人。


男は狩人。
今日は獲物が、一つも穫れない。
まるで山から動物たちが居なくなってしまったかのよう。
失意、失意の帰り道。


いつもの慣れ親しんだ道。
どこでどう間違えたのか、普段と違う木々の様。
行けども行けども道はなく、戻れども戻れども同じ場所。


思い出すのはいいつたえ。
子供の頃の言い伝え。
山の奥の奥の奥。
山の神の住まう場所。
迷い込んだら出られない。
二度とは生きて帰れない。
喰われて骨になってしまう。


小さく震えた視界の隅。
光がキラリと通り過ぎる。
そちらの方へと目をやれば。
ふしぎな、ふしぎな鳥が一羽。
まばゆく輝く黄金の冠、に見紛えるほど立派な頭の羽。


その輝きに目を奪われ。
ふらり、ふらりと後を追う。
ふわり、ふわりと後を追う。


いつの間にやら見慣れた景色。
山の出口に続く道。
一息ついた狩人は、ふしぎなふしぎな鳥を見る。


「そうだ、この鳥を今日の獲物にしよう」


夜が明けて次の朝。
さっそく、獲物を自慢した。
あっという間に人だかり。
家の周りに人だかり。


「こんなに人が来るのなら、見物料を取ればいい」


ところがこれが大当たり。
あっという間に小金持ち。
大喜びの男の元へ。
人混みかき分けやってきた。
貴族の使いがやってきた。


貴族の使いの言うことには。
ふしぎな鳥を売って欲しい。
言い値でいいから売って欲しい。
それを聞いたその男。
二つ返事で引き植えた。


「どうせ長くは続くまい。それならば今のうちに売ってしまった方がいい」


さっそく貴族へ謁見に。
貴族の館へ謁見に。
これまでおとなしかったとり。
このときだけは大暴れ。
貴族の頭に爪立てた。
爪立てた。


鳥はその場で殺されて。
次に男の番が来る。


「やめろ、やめてくれっ！！食べないでくれ！！！」


はりつけされた男の体。
腹を裂かれた、男の体。
鳥達、体に群がって。
一日たたずに骨だけに。


いつもの慣れ親しんだ道。
どこでどう間違えたのか。


片付け終えた首狩りが。
見上げた見上げた西の空。
真っ赤な真っ赤な西の空。
金の光が羽ばたいた。

言いながらクリストファーの髪を乱暴に掴んで引き寄せる。

突き飛ばすように、乱暴に解放する。

背後に回った動く人形のようなものを訝る間もなく、
声をかけてきた人物のほうを見る。

髪の色などが似ているので双方は関係者であろうが、
少なくとも己が頼られているのなら、無碍にはすまい。

赤髪の青年は歩いてきた人形に視線を落とす。

言いかけたその時、ふと視界から人形が消える。
追って顔を上げると、人形と瓜二つのような姿の女性と目があった。

樹は、根本の人形に気がつくと下を向いた。

　

　

そう言うと、幹から生えている腕のような枝が上のほうに伸びていき、
髪の毛のように生えている葉っぱを三枚、千切って人形の前に差し出した。

今度は人形を持ち上げた少女に視線をずらす。

　

　

　

樹の後ろの方から眼鏡をかけた女が近づいてきた。

　

目の前の人形にびっくりして、思わず立ち止まってしまいます。
話しかけられると、その可愛い仕草に、女の子らしい微笑を浮かべます。

あまり優雅とはいきませんが、ぺこりとお辞儀をかえしました。

つまみあげられた人形を目で追って、女性を見上げます。
そのまま後ろに倒れそうになって、あわてて一歩、後ろに下がります。

地面に降ろされた袋を見て、あぁ、と頷く。

と、どこからか椅子が歩いてきた。その上に魔女が袋を乗せてやると、またどこかへ去っていく。

背後に回り込まれてなんだろう、と思っていると青年が走ってくるのが見えた。

そう言って人形が隠れているであろう自分の背後を振り向く。

赤いカエルのような生き物はポンチョの裾をつまんで一礼

男がその声に気付き、その姿を認める前に靡いたスカートは視界から消えてしまう。
緩慢な動作で振り返ろうとした矢先、別の方向から声をかけられてそちらに意識が向く。

繰り返すように呟いてはみたものの、男に思い当たるものはない。

声をかけてきた青年に男は返す。
長い髪の間から覗くその目は視線を合わさないように宙に浮いたままだった。

珍しいものを見た、と言うようにその動きを暫し目で追った後、
その視線を元に戻したところで先の人形とよく似た顔をした人が目に入った

思わず先ほど人形が走っていった方を一瞬振り返る

そう言って人形の走っていった方に指を向けた

—軽い挨拶とともに振り返る。

—驚きながら、視線を合わせるためしゃがむ。

—今度は小人(?)が上昇した。戸惑いつつも視線を上げる。

—無理がある。

赤い髪の鬼は驚きを隠せなかった。“喋る人形”など見たことも聞いたことも無かったのだから。

少し遅れて、青い髪の女性が息を切らしながら走ってきた。どうやらこの“喋る人形”を探しているようだ。

赤い髪の鬼が青い髪の女性に人形を手渡＿＿＿＿＿＿一瞬、手が止まった。

が、人形はそのまま持ち主の手の中に帰っていく。

ゆっくりと近付いて来る人影らしき存在に気付き、顔をしかめる。

思ってた以上に低い身長に、自然と視線も下に。一礼の動作も視線で追ってしまう。

その顔に見覚えはなかった。それ故、相手の言葉に反応は示さず静観する。顔はしかめたまま。

彼女なりの言葉でコミュニケーションを取り始めたその時
急に視線が持ち上げられたので口を閉じた。

相手2人の顔を交互に見比べ、関係性を推測した。

後にやってきた女性と、背後の人形を見比べて。

ふにゃふにゃと、そう答えた。