この程度の相手なら何回か山で戦ったことがある。
ノームの力が乗った打撃を加えると、アメーバは断末魔とともにただの泥へと化した。
まき散らされた毒で少々気分は悪くなったものの、一息入れるとすぐに回復した。

ノームの忠告が終わるか終わらないかの瞬間である。

「おい・・・！そこの貴様は何者だ！？」
何者かがミルフィーユに声をかける。
声のする方向に顔を向けると、黒い甲冑を着込んだ兵士が訝しげに見つめていた。

ミルフィーユの田舎くさい挙動と薄汚れた作業着。

とっさの判断にしては悪くない回答だった。

「新任だと？そんな話は届いていないな。
・・・そもそも最近の治安の悪化を鑑み、一部を除き庭師には全員暇を出しているはずだが。」

「いや、しかしなかなか・・・うむ、なるほど・・・」
ミルフィーユをしげしげと観察しだす兵士。
先ほどまでの不審者に向ける眼差しとは、何か違う気もする。

そして兵士は突如晴れやかな笑みを浮かべ言った。
「よし、わかった！実は俺はあの方の元部下でな！
お前の腕を見てやるからかかってこい！」

「部署は違えど後輩になるわけだ、遠慮はいらんぞ！」

ミルフィーユ渾身の演技も虚しく、兵士は意気揚々と剣を抜く。

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