さて、なんの因果かこの世界まで来ちゃったけど……これからどうしたもんだろうね。
　まさかこうも人が集まってるとはなあ。もう少し身軽に動ける規模だと思ってたんだけど。義憤だかなんだか知らないけど、よくやるもんだね。
　しかしこれだけの人数の食料とかはどうするんだろうね？　エンブリオの助けがあると言っても、全部を全部賄えるとは思えないし。
　……ま、そこは戦場のお約束ってヤツになるのかなあ。仕方ないね、そういう世情だもの。

　やだやだ、と空を見上げて。どうしても目に入る巨大な建築物に、もうひとつげんなりが追加される。
　この世界、メルンテーゼを治める王の居城。これから僕が行くことになる戦場だ。
　……ああ、やだやだ。厄介事とか刃傷沙汰とか無しには済まないんだろうなあ。済むわけがないよなあ。
「それなんてミラクル？」

　自分の口から漏れたつぶやきに自分で苦笑して、視線を人混みへと下ろす。これから肩を並べて戦う仲間達の元へ。
　名前とかはまあ、参謀役の……ルリアンナ、だっけか。彼女がまとめてくれてるんだろう。僕が覚える必要があるのは実際に組む面子と、あとは、要注意人物ぐらいか。
　なにせこれだけの人数で、来た理由が理由だ。義憤に燃える若き勇士もいくらか居るだろうけど、それ以上にどんなロクデナシが混じってるか分からない。そういう連中は少しすれば噂に登ってくるだろうし、できるだけ接触しないようにいきたいもんだね。
　……いやま、僕もその分類に入れられてないとは限らないんだけど。


　そんなふうに少しばかり物思いにふけっていると、視界の端になにやら気になるものが見えた。
　日差しにやられたのか具合が悪そうにしている白衣の少年と、彼に日陰をつくっている青年。ありゃヒトじゃないな、どっちも。
　小さい方は分かりやすいというか、まだ隠し方が身についてない感じか。年も見た目相応かもしれないな。
　もう一人は……少しにおうぐらいか。自分で気づいてない類かな？
　まあ何にせよ、若い子が具合悪そうにしてるのを気づいて放っておくのも気が引けるね。水とかなんとか聞こえるし、持っていってあげるとするか。