あたし、花音。美浜花音。どこにでもいる普通の大学１年生
……の、つもりだったんだけど……。

何やら記憶喪失した挙句異世界まで飛ばされた件について

とまぁどこぞのラノベのタイトルのような展開に付き合わされたわけで。
正直困ったわ。幸いなことに街の住人が優しく、倒れていた私を介抱してくれたから何とかなったのだけれど。
記憶喪失、と言ってもすべてを失ったわけではない。基本的な生活知識等々は持っている。ただ、私の出生やそういった思い出の方はぽっかり。
名前もたまたまお財布の中に学生証が入っていたからわかったもの。他は全然さっぱり。
あるのは私が倒れていた近くにあったらしいこの刀と、……まぁ今着ているものすべて？　なんにせよ『私』に対しての情報が少なすぎるわ。
とりあえず介抱してくれた人に色々と話を聞いたところによると
①この世界では新しく王が誕生し、重要なネクターを根こそぎ奪い取り、独占を始める。
②エンブリオを生活の軸としている住人達はその行為に対して反発、他の世界からの精鋭をも要請し、大規模な一揆を開始した。
とのこと。
で、どうやら私はその他の世界からの精鋭らしい（生徒証に書いてある神楽坂なんて地名はこの世界にはない様子。となると逆説的に、といった具合だ）
……いやいや。精鋭？　私が？　この刀を使って？
一体前の私もとい昔の私は果たして何をやっていたのだろうか。まぁここに日記を書いても人に聞いても誰も答えられないのだけれど。
なんにせよ、わかることはただ一つ
私はどうやらこの世界を救うために来た。ということ。
昔の私がどんな私だったかは知らない。もしかしたら性格自体も違うのかもしれない。ただ、悪役というわけではなかったようだ。
別に逃げ出しても構わないのだろう。でも、私はこの世界の住人に助けられた恩義がある。
もし彼らが言うとおり、私にそのような実力があるというのであらば、それを返さない理由はないわね。
というわけで私は一揆についてもう少し詳しく話を聞いた結果、向かうべき場所へと向かう。
何もお礼を返せない自分が憎いけれど、向こうは気にしないでと言ってくれた。直接言ったがここでも改めて、ありがとう。
日記は続けていくつもり。書いていくうちに昔のことを思い出すかもしれないし、場合によっては貴重な情報源となるかもしれないからね。
……刀って案外重たいわね。ホントにこれ私のなのかしら……


とまぁなんやこんやで王城前までたどり着いたわけで
その間になんか村を助けたり助けなかったり、それはまた今度話しましょ。
どうやら一揆というのは本当らしく、それらしい人々が集まってる感じ。
中には「え、なんか凄そうなオーラも溢れ出している」なんて感想をうっかり口に滑らしてしまいそうな屈強な存在もいて、なんかもうホントに私はこの中にいていいのだろうか。
というか人多すぎぃ！　何よあの長蛇の列！　どこぞの大手人気○○サークルの列形成よりもながーい！！
冗談は置いといて、私も素直に並ぶ。
並んで実感する。私も一員であると。
緊張してない、と言ったら嘘だと思う。なにせ自分はある意味新米もとい初心者だ。この刀だって正直どうやって振り回せばいいか頭では理解できない。
しかし、道中試し振りをしたが、身体が染みついているのか、まぁ素人目に見てもいけるんじゃないか？　という感覚は得られた。
少なくとも刀に振り回されることはない、……多分。
さて、今までのことを思い返しながら日記を書くと時間がたつのも早くなるようで。
最後尾にいた私は気づいたらもう手前。
それじゃあ、また今度。私が無事戻ってこれたら続きを書くとするわ