★一週　友達

城下町の、町はずれにある小さな森に一つの小屋がある。
全体的にツルで囲まれた、少しアンティーク感のある小さな家だ。

その家に近づく人影が一人。
この家の主、ティシアが帰ってきた。

普段この家の周り以外は出歩かないティシアは、久々に城下町に出かけて良いことがあったのだろう。
足取りが軽い。

カチャリと扉を開け、ただいまと一言告げる。

誰もいない家に挨拶を言った相手は、そのまま人形を作るための工房となっている部屋の真ん中に椅子に腰かけられた人形。
この部屋にも今まで作られた人形が所々置かれているが、真ん中に座っている人形だけは他とは違った。
少し古い感じはするが、瞳に意思を感じる。

『おかえりなさい、ティシア』

発せられたのは確かにその人形からだった。

『なんだか楽しそうね。なにか良いことでもあったの？』

そう聞かれて、町で購入した荷物などを整理しながら返答する。

「エレアナ。友達が出来たんだ」

とても冷静な返答ではあるが、とても興奮しているというのが雰囲気でわかった。
エレアナと呼ばれた人形も、伊達に幼い頃からの付き合いをしてるわけじゃない。

『あら、どうしたの？とんでもなく急成長じゃない』

馬鹿にしてるのかと思われがちだが、ティシアは今までこの小屋で一人で暮らしていた。
ちょっとした食料調達や、人形を作るのに必要な雑貨品を買ったり、町で起こるお祭りで人形劇を開く以外は人との交流が少ないため、友達と言えるものといえばエレアナと、今まで作った人形だけだ。

どんな人たちと友達になったのと聞けば、面白い人たちだったとまた簡素な返答。

紹介する気があるのかと。

「今度はエレアナも一緒に連れていくよ。楽しみにしてて」

『ええ。もちろんだわ』

この年にして初めての友達。
ずっと見守ってきていたエレアナにとって母のように嬉しい気分だった。



そんなエレアナとも、今こうやって会話できるのも危ぶまれている。

ネクター。
それはこの世界の住人にとって、エンブリオと契約するのに大切な物。
このティシアが幼いころから大切にしている人形に入っているエレアナこそ、エンブリオで、彼女にネクターを捧げることで人形に宿って会話ができる。もちろん人形に入らなくても会話は出来るだろうが。きっと人形に入った方が楽なんだと解釈。

そのネクターを、新しくなった王が独占しようとしている。
知らせが来たのはつい最近。

珍しく扉に置手紙がされてあったから、ときめいて開いたものの、そんな悲報。
精鋭が集い、大規模な一揆が開始されるとして、ティシアも参加することになる。


★第一週　終


-あとがき-
はじめまして。一揆が始まりましたね。

最初ということで、結構説明的なかたっくるしい文章になりましたが
今後はもっとゆるくしたいです。ゆるく…したいです。
ちなみに新しく出来た友達というのはPTメンバーを指しています。

ツッコミどころ駄文多々あるでしょうが、長い目でどうか
どうぞよろしくお願いします。