「………………」

薄暗い裏路地の隅で、五木は木偶のように呆然と立ち尽くしていた。
思考能力もまったく働いていない。
ただただ呆然としている。
路地裏に駆け込んできた子供がぶつかっても、置物のように動かない。

（……。……は？……訳が分からない…………）

ようやく浮かんできた言葉はそれだけである。

自分の状況を確認してみると。
無一文。逆さまに振ったりどれだけ叩いても金は出てこない。
家がない。というか強制的に外に出された。
行く当てもない。職もない。頼る縁もまったくない。

（……どうすんのこれ。どうすんの……っていうか本当に訳が分からないんだけど……）

しばらく突っ立ったまま延々とそれだけを思った。
打開策なんて考えられず、ひたすらに無意味な時間が過ぎていき。






（……………………、腹減ったわとりあえず）

五木は自分の置かれた状況から目をそらした。