空に高く、高く、星が流れていて、見様によっては鳥にも見える。
夏らしく暑いものの風は涼しく過ごしやすい。強すぎでもなく、弱々しいわけでもない
そんな良い風だ。

仲の良い双子である雪華と銀弥は二人で祭りに来ていた。
夏になるとどこかしらでやっているアレだ

大通りには人多く、所狭しと屋台が並んでは食い物やらなんやらを売っている。
しかし社の近くは店一つ分程空いて屋台が立ち並んではいるものの、人は少なく、静かなものだ
『人以外のモノ』が立ち寄るにはとても都合がいい


そこは見る人が見れば非常に異様なのだが……
それはそれ、『この町』ではそれが普通なのだ



この町は『妖怪の町』なのだから。







雪華
「あーついー……」
銀弥
「雪ねぇ、暑いのが増すからそう言うのやめてぇ……」


双子は今日とて扇風機の前でごろごろと茹だっていた
学校は夏休み、そうでなくてもこんな暑さ。勉強など手に付かないだろう
それが学生とでもなれば尚更である。

茹だっていた雪華は扇風機のモーターが呻る部屋でアイスを頬張りながら空間へ言葉を投げた

雪華
「なんかこう……もっと涼しくなんないかなぁ……」
銀弥
「夏に暑いのなんて普通でしょ……」

夏なんだから、そう繋げて銀弥は本のページを捲った。
ペラッと紙の捲れる音が本ではなく開けていた窓から聞こえ、『言葉』が届く
それはいつもの様に鳥のようなものを形取り、見られることでソレを伝えた
その鳥の様なものは次の瞬間には虚空へと姿を消し、その言葉は双子へと伝わった。

要件はいつもの様に、内容は簡潔に。



————父はいつも唐突だ。