チュンチュン…鳥の囀り。朝の目覚めを知らせる声だ。
太陽が昇り、雲一つもなく清々しいほど晴れ渡っている。
しかし、目が覚めると前は何も見えない。だが微かに香ばしい匂いを漂わせるということがすぐわかるだろう。その後にトントントンと音が聞こえてくる。寝起きの少年はきっと彼が料理をしている音だろうと思った。
そして枕元に置いた機械、知覚センサーギアを手に取り、頭に被せた。
起動音と共に視界が明瞭になり始めるとゆっくりと起き上がり、正装に着替え始める。

それが終えるとその音の元へと訪れるだろう。

彼の名はラドアール。グリース家における次男である。

機械的な動き、そして発言。その機械はセバスチャン。主人であるラドアールに使える執事である。

ラドアールは彼の言うままに椅子に座り、嗜みを整える。
１分も経たないうちにセバスチャンが作った料理が並ばれ、豪華な朝食の時間を迎える。

<HEX>……それは機械の原動力となるエネルギーが多く詰まった液体。
グリース家の近くにある鉱山でしか採れない重要な資源である。
車を例えるなら石油、と言ったほうがわかりやすいだろう。
しかもそれは濃厚なあまりに１滴だけで1日ずっと時速100kmを走ることも可能だそう。
だが、<HEX>を機械体内に入れる際……、その"濃厚なあまり"に
感覚が麻痺するほどの巨大なエネルギーを感じ取ってしまう、らしい。
もしくは……いやこれ以上は止めておこう。これは彼の身のためである。

朝食を終えると、彼セバスチャンは皿を片付け、主人の元へと赴く。
さあ今日もグリース家一日が始まる。


これは一揆が始まるあと僅かの話である。