その日はとても暑い日で、僕は焦っていたんだ。
一刻も早く薬草か・・・無いとは思うけどネクターを探さなくちゃいけなかった。

村長の家の娘さんが熱で倒れて、当然だけど村にいる薬師は僕だけで。運悪く熱に効く薬草も切らしてて。


新しい王様が、ネクターを独占しだしてからろくなことが無いんだ。
使者の人たちが無理やりここら一帯のネクターを集めて奪っていった———
その過程で、山や森や・・・僕の家の畑も、荒らされて・・・一時期は薬の在庫がほとんど無くなってしまうくらいだった。

その間は、僕のエンブリオたちががんばってくれたけど・・・

隣村から材料を取り寄せられたころには、もう数枚の花びらが残っていただけだった。

あとは当然、分かっていたことだけど、また会えるとは知っていたけれど、別れは悲しかった。
僕は、同居人と助手とを、同時に失ったのだ。

新しい王様が悪いのは皆が分かっているけれど、僕が今、役立たずなのは・・・僕が一番良く分かってる・・・

でも、僕には・・・皆と王に立ち向かう力も、偶然残されたネクターを見つける幸運も、ない。





・・・そんなときだった。僕が、その特徴的な紅い花びらを見つけたのは。

どうやら、一枚だけ・・・木の上のほうに引っかかってたみたいだ。なんとか手を伸ばせば・・・よし、取れ

そんな声が、上のほうからした。　と思ったら、手に持っていたはずの花びらが無くなっていて・・・

声がした方を見上げる僕。するとそこには、妙な紫色の髪をした、ちっちゃな人型の何かが。

とっさに事情を説明して謝る僕。すると——

・・・と、こんな風に・・・なんだかよく分からないうちに協力してくれることになって・・・

その後は・・・気づいたら自分の家にいて・・・いつの間にか娘さんの熱は引いてて・・・

薬瓶のなかには、あの紅い花びらが・・・


・・・あれ？　どうやって・・・治してあげたんだっけ・・・？