リアス・フィアー・デスサイズは面倒くさがりである。

日々を過ごせれば良いと思い、面白い物見たさに土地を世界を転々として傭兵をしながら旅を続けている。
ある日、メルンテーゼにて一揆があることを知ったリアスは、特に一揆の興味を抱くことなく、日銭を稼ぐためにやってきた。



町が騒がしい。反乱……一揆を起こすとは本当の事らしい。
彼の王は横暴である。人々の生活に必須とされているネクターとやらを独占していればどうなるか、考えるのは容易だろう。
現に私もネクターには大変困らされた。この独自の世界を築いているメルンテーゼは外界との通信が厳しい。結果、エンブリオ体と適応化させた分体と契約しなければ通信もできない有様だ。

ここには多数の人が集まっている。
ここの世界だけではない。異世界の住民も多数姿を見かける。
一人二人くらいは珍しくないが、この人数となると圧巻だ。
この世界とあわせて1000人……いやそれ以上だろう。


……阿呆らしい、適当に手柄を立てて報酬だけ貰えば良い。
面倒事に積極的に首を突っ込むのは阿呆のすることだ。


すると、一歩下がった所で眺めていると一人の少女に声をかけられた。
どうやらこの黒い箱が気になるらしい。
……みられて困る物ではないが、ひと目のつく場所に出す物では無いだろう
適当に誤魔化していると少女が問いた。

「ねぇ、おねーちゃんも戦うの？」

「ああ、私は傭兵でね」

「へぇ〜私も戦うんだ！昔から腕っ節には自信があるんだよ！」

そう言って少女は右腕にコブを作る。農楽で鍛えたのだろう、幼いながらもたくましい肉体をしている。

「そうか、無事成功すると良いな」

「うん！ネクターは皆の物だもんね！」

そして少女は立ち去った。
あのような少女までも戦いに出るとは、そこまで切迫しているのか。
右手にはどうみても農具用である大鎌が握られていた。
鎌は元々戦闘向きではない。スコップでも握ったほうがマシなレベルである。
だが、農具である鎌を使っているという現実は物資の不足を暗に示していた。
長期化すれば不利なのは自明の理であろう。

「保険をとっておいたほうが良いかな」

そして私は黒箱を担ぎ、めぼしい人材を求めて人混みへ紛れるのであった。