シミナ=シエラは思考する。
意識を自己の深層へと潜らせ、蜘蛛の糸のように細い『ナニカ』を手繰るように引き寄せる。

——それは、血よりも紅き血統の欠片。
《紅い月の王》クリスティアナ=シエラの眷属として、最も濃い血を引くシミナのみが保有する王たる証。


最も濃く、そして薄いその血に、シミナは強い劣等感を持っている。

決意は固く。信念はただ一つ。
その手に持つ槌は、夢喰いの名を冠するモノ。
砕き、飲み込み、そして全てを喰らうもの。
その名に恥じぬ為に。その在り方に恥じぬ為に。

彼女はそう決意を固めたのだった。


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新しい王がネクターの独占を始めたことを切欠に起こったこの一揆。
彼女はもともと、そのようなことなど歯牙にもかけていなかった。
というのも、自らが女中として生活している屋敷の主人が、よもやこのようなことに興味を示すとは思っていなかったからだ。

ところが、違った。興味を示す、示さないどころではなかった。
あろうことか、屋敷の主人は自分の娘を二人、王を倒してこいと家から追い出したのだ。


『王を打倒しろ』というその一言とともに。


そうして屋敷を出ることになった娘姉妹、雪枝と霊香の後を追い。
護衛として、世話係として、お目付け役として。彼女——シミナとその妹、シオンは共に屋敷を出ることになる。

自らの力を示す、絶好の機会を虎視眈々と狙いながら。
握る槌に力が入るのを誤魔化そうともせずに。