村を出発して、まだ1週間も経っていないというのに

私は帰りたくて仕方がありません。

でも、神様に誓った以上、村を救う方法がわからないまま

帰るわけにはいきませんでした。

思わずため息がこぼれます。

「……お父様、お母様……」

もう幾度となく泣いたので、涙はこぼれませんでした。

それを“感覚が麻痺した”と取ればいいのか、

“悲しみに負けない強い心を得た”と取ればいいのかは、

私にはわかりません。

いえ……考えたところで、未熟な私が私自身を

客観視できるはずがないのです。

私は考えるのを止め、黙々と街道を進むことにしました。

「……痛っ！？」

足の裏が激しい熱を帯び……そして鈍い痛みが広がっていきます。

ボロボロにすり減った靴底を突き破るように鋭い石が突き刺さっていました。

私は慌てて石を取り除きます。

少し黒ずんだような血が止めどなく溢れてきました。

私は悲しくなりました。

村を救うと言って旅に出たものの

満足に旅を続けることすらできないことに……。

村に悲劇が訪れるまで、私は両親の庇護下にいました。

それを受けられなくなった今、愛する両親を救うためにも

私ががんばらないといけないはずなのに……現実は非情でした。

「……それでも……」

私は持ってきたハンカチーフで包帯代わりに足に巻き付け、

よたよたと歩き出しました。

「こんなところで挫けてしまったら、あまりにも惨めすぎる……」

それは弱かった自分に対しての決別の言葉でした。

——強くなりたいじゃないんだ……強くなる——

私が変わり始めたのは、この頃からだったと記憶しています。