—一日目 狼の日—

忌々しい研究所のクソ共から解放されたはいいものの、身体に捩じ込まれたパーツと意志は最早切り離せないらしい。

オレ様の身体だけベースにすればよかったものの、よりにもよって長命なドラゴンの心臓を埋め込んだもんだから、俗に言う『二重人格』に近い状態になっている。

身体の構造を見れば分かるだろうに、飛べもしない余計な翼を付けやがって。
それでも突風を起こすことぐらいは出来るし完全に邪魔かと言われると答えはNOだ。
それに、尻尾はアイツの物に取り換えられて助かっている。
オレ様の尻尾は無駄にふさふさしていて威厳はあれど攻撃性に欠けていたが、アイツのは蛇腹状のごつごつとした形状で、先端部分には鋭い麻痺針のおまけ付きだ。
研究所にいる時は放り込まれるエサに戯れに牙を突き立てるぐらいしか愉しみが無かったが、この土地には面白そうなニオイがぷんぷんと漂っている。
ニンゲン、獣、ドラゴン、無機物。
神経毒を注いで、動けない哀れな獲物を締め上げて、最後は……
まあ、そこまでやると追放されかねんからやらないだろうが、とにかくオレ様の鬱憤を晴らす場としては丁度良さそうだ。
例えば、目の前にいるニンゲンとか。